日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

トラブルは現場で起きている!

公益財団法人の会長が知人女性の会社に与えていた特別の利益

2021/08/17

 特別の利益、それは利益の分配を行わない非営利や公益の世界では文字どおり特別の意味を持ちます。一般社団法人や一般財団法人において、特別の利益の供与があると、非営利型法人の要件が満たされなくなり、過去にさかのぼって致命的な課税を受けることになるので、絶対にあってはならないこととされています。まして、国民の信頼の上に成り立っている公益法人にそのようなことがあっていいはずはありません。

 令和3年7月1日、外国人技能実習生の受入れ団体として国内最大の規模を誇る公益財団法人国際人材育成機構(アイム・ジャパン)が、10年近くにわたって特定の事業者に対して特別の利益を供与してきたとして、内閣府から勧告が出されました。内閣府では、公益認定の取消しに至り得る重大な問題と指摘しています。

 通算13年にわたってこの法人のトップを務めてきた旧労働省OBの前会長は、知人女性が経営する会社に優先的に物品を発注し、9年間で6億円近い取引を行っていました。前会長は、この知人女性とは食事やゴルフなど親しい関係にあり、この知人が所有する都心のマンションの部屋を借りて住んでいました。さらに、前会長はこの会社に350万円を出資していたことや、前会長の後を引き継いで会長に就任した弁護士も50万円を出資していたことなどが明らかになっています。

 他にも、技能実習生を加入させる共済組合を作り、アイム・ジャパンが無償で取次業務を行う一方で、共済組合から約6年にわたり数千万円に及ぶ代理店手数料を特定の事業者に支払ってきた事実も知られています。

 さらに問題は、このような特別の利益の供与を黙認してきた他の理事等の責任や、その理事等を選任してきた評議員の責任にも及びます。内閣府は、勧告の中で、「理事等の中には法令遵守に関する知見の発揮が期待される元国家公務員が含まれている」としていますが、その後も引き続き在任しているというというのですから、内閣府の勧告もずいぶん甘く見られたものです。

PAGE TOP