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トラブルは現場で起きている!

認知症と類似の「高次脳機能障害」を知る

2018/10/09

 脳卒中で倒れた人などの後遺症として、「病気は治ったのだが、何かおかしい」「理解できない行動をする」という特異な精神上の障害がみられますが、これも知らなければならない大事な病気です。

 この病気は、よく認知症に間違われますが、これは「高次脳機能障害」と呼ばれる病気です。この病気は、認知症と同様、いったん正常に発達した脳が壊れる疾患ですが、もちろん認知症とは異なる病気(障害)です。

これからは高次脳機能障害の知識も大事
 
資産管理や承継を考えるにあたっては、認知症同様、この高次脳機能障害についても知っておくことも大事になってきています。「高次脳機能障害は一般に、外傷性脳損傷、脳血管障害などにより脳損傷を受け、その後遺症などとして生じた記憶障害、注意障害、社会的行動障害などの認知障害をさすものである」と定義されています。それは、脳卒中(くも膜下出血・脳内出血等)、感染症などの病気や交通事故、転落、転倒等で脳の細胞が損傷されたために起こる障害なのです。


 高次脳機能障害という病気の特徴は、身体の障害がなかったり、その程度が軽いにもかかわらず、特に記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害といった認知の障害が原因となって、日常生活や社会生活にうまく適応できない人たちも含まれます。

 この認知機能の障害のため、高次脳機能障害については、一般の人は認知症だと誤解している人が多いようです。いずれにせよ脳卒中は、高次機能障害の原因として最も頻度が高いです。

高次脳機能障害は見えない病気
 
それは、誰にでも起こり得る障害で、会話が困難となり(失語症)、その対象そのものが何であるかわからない(視覚失認)、よく知っている人の顔がわからない(相貌失認)、会話や環境音が聞き取れない(聴覚失認)など、生活の中で支障が生ずる病気です。


 しかし、この病気は、疾患や事故発生直後だけでなく、脳の損傷が一応回復改善したとみられた後などに、「何か変だ」「だらしがない」「突然キレる」といった障害などの症状がみられるのです。このため、「見えない障害」とも言われています。

高次脳機能障害は回復する病気
 「高次脳機能障害は回復する」という信念をもって、その病気の人に接しています。そこには、正しいリハビリによって、多くは、意思表示はできるようになると信じているということです。

 私と高次脳機能障害者との出会いを紹介します。公証人時代の話です。

「45日目の回復」
 
Aさんには、家族はなく、十数年前から知人のBさんの世話を受け単身アパートで生活していました。いつも朝7時にはAさんから電話連絡があるのに、その日は連絡がなく不安になったBさんがAさん宅を訪ねたところ、Aさんが居室で倒れていたのです。直ちに救急車を呼んで都内の病院に入院、脳梗塞の診断を受けました。意識を回復したのは翌日昼、その後は声が出ない日が続きました。入院から2か月半後、知人の専門職の人から私にAさんの遺言を作成してほしいという話があり、Aさんは以前から遺言の内容を話していたというので、その内容の公正証書を準備して入院先の病院に出張しました。


 付き添っていたBさんは「Aさんは45日間も声が出ないのです。ただ、本人はうなづいたり首を振ったりできますので」という話をされたので本人にお会いしました。その話どおり、Aさんの声は出ていませんでした。

 遺言公正証書の作成には「本人の口述」が必要です。その方法は、口頭の説明だけではなく、筆談や指差しなどにより本人の意思が表明できればよいのですが、Aさんの場合は時間をかけて遺言の骨子を確認できたのです。だが、私はAさんの態度からしてリハビリによって会話ができると確信し、Aさんの郷里の話をし、機能の回復の挑戦を考えました。

 Aさんは長野県出身。私は2度長野に勤務し、長野のことはよく知っていました。私は一方的にりんごやそばの話をし、途中、途中で「長野のりんごは最高だよね」と話しかけたのですが、するとAさんは「そう」といい、ついには自分が出生した村の話もしたのです。Aさんは、脳梗塞による高次脳機能障害があって一次的には失語状態になったのでしょう。

この病気は難しいが逃げない
 
私は、3回脳梗塞を患った人の意思確認を行ったこともあります。高次脳機能障害は、治る病気と言われますが、正確には「回復可能な病気」なのです。


 この病気にり患した人については、接することが難しいのですが、医師の説明をよく聞いて、本人の財産管理や資産承継の相談業務に当たってほしいと思います。

なお、私は、日本成年後見法学会の常任理事をし、同会の高次脳機能障害研究委員会に所属していますので、この病気のことについてはより知識を得たいと考えています。

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