令和5年税制改正大綱 相続税の生前贈与加算が7年に延長
2023/01/05
高齢化にともない高齢世代の資産が偏在するとともに、いわゆる「老老相続」の増加など、若年世代への資産移転が進みにくい状況が問題視されていた。また、日本の贈与税は、相続税の累進負担の回避を防止する観点から相続税よりも高い税率構造となっているが、相続財産の多いごく一部の富裕層にとっては、財産を生前に分割して贈与することで、相続税よりも低い税率が適用されるという状況があった。
そこで、令和5年税制改正大綱では、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築するため、相続税・贈与税の見直しが盛り込まれている。
まず、平成15年度に導入された相続時精算課税制度の使い勝手を向上させる。具体的には、相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする(令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用)。
次に、暦年課税においても資産移転の時期に対する中立性を高めていく。相続または遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする(令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用)。合算期間は令和9年1月1日から段階的に伸びていき、令和14年1月1日から7年加算されるようになる。
教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直しも盛り込まれた。直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置については、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
➀信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が 23 歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす(令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用)。
②受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率が適用される(令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税または贈与税について適用)。
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置については、受贈者が 50 歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとした上、その適用期限を2年延長する(令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用)。