名古屋地裁 相続税1億7676万円脱税した被告人に有罪判決
2017/08/18
名古屋地裁はさきごろ、相続財産の一部を隠匿して過少申告し、相続税を免れた相続人に対し、懲役1年6か月、執行猶予3年、罰金2500万円(求刑懲役1年6か月、罰金3000万円)の判決を言い渡した。
事実内容は次のとおり。被告人は、平成23年12月に亡くなった被相続人Aの長女。被告人は、Aの財産をAの妻であるBおよびAの養子であるC(被告人の夫)と共同相続し、BとCの委任により、相続に関する事務を行った。しかし、被告人は本人およびBとCの相続財産に関し、相続税を免れようと考え、相続財産から現金や預貯金等の一部を除外して相続税課税価格を減少させた。
本来であれば、相続人全員分の相続税課税価格は6億9851万6000円(被告人:1億7335万1000円、B:3億6026万7000円、C:1億6489万8000円)だったが、被告人は、全員分の相続税課税価格について合計1億7640万6000円(被告人:8579万8000円、B:3284万円、C:5776万8000円)という虚偽の相続税申告書を、その事情を知らない税理士を介して提出した。
正規の相続税額は、被告人が4897万2000円、Bは9249万8800円、Cは4658万4000円。一方、被告人の不正行為によって相続税額は、被告人が674万5000円(差額4222万6600円)、Bは500円(差額9249万8300円)、Cは454万2700円(差額4204万1300円)となった。
名古屋地裁は、「ほ脱税額の合計は1億7676万円余りに上り、ほ脱率も約93.9パーセントと高率である。被告人は、実父から生前指示されていたところに唯々諾々と従って、実父の残した財産を守ろうなどと考え、犯行に及んだもので、その思慮に欠けた利欲的な動機に酌量の余地は乏しく、厳しい非難を免れない」と指摘。
しかし、「被告人は、夫とともに、本件後に死亡した実母の関係も含め、既に然るべき修正申告を行い、本税、加算税及び延滞税として合計2億5700万円を納付している。そのほか、被告人が自己の罪を認めて反省の態度を示し、二度と過ちを繰り返さない旨を述べていること、夫が今後の指導監督を誓約していること、前科前歴はないことなど、被告人のために酌むべき事情も少なくない」として、懲役刑については3年間の執行猶予とした。