インボイス制度 企業の65%が順調に対応も『懸念あり』が9割
2023/10/26
インボイス制度(適格請求書等保存方式)が10月1日からスタートしたことを受け、帝国データバンクでは、インボイス制度への対応状況や懸念事項に関するアンケートを行った。アンケート期間は2023年10月6日~11日、有効回答企業数は1494社(インターネット調査)。
それによると、インボイス制度の対応状況については、65.1%が「順調に対応できている」と回答。企業の3社に2社が順調にスタートを切っていることが分かった。一方で、「対応がやや遅れている」は28.5%、「対応が大幅に遅れている」は3.1%だった。
企業からは「社員や取引先へ早めに対処していて、何とかスタートできた」(機械製造)という声がある一方で、「インボイスの申請はしたけれども、番号の連絡等がない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)や「振込手数料など、取り扱いについて手探り状態のものが多い」(運輸・倉庫)といった声も聞かれた。
規模別にみると、「順調に対応できている 」割合は大企業が71.5%に対し、中小企業は64.2%、「対応がやや遅れている」割合は大企業が24.4%に対し、中小企業は29.1%だった。「システム変更にお金をかけられない」(建材・家具、窯業・土石製品卸売)や「仕入税額控除に対するルールが細かい。免税事業者対応の税区分など処理内容が増え、少ない人員で対処するには限界がある」(飲食料品・飼料製造)など、大企業に比べて中小企業で対応が遅れている様子がうかがえた。
インボイス制度の導入による懸念事項(現在/今後)について尋ねたところ、「懸念事項あり」の企業は 91.0%と9割にのぼった。「懸念事項なし」は6.0%、「分からない」は 2.9%だった。「社内周知に力を入れてきたが、費用の都合上、システムで対応できない部分もあり運用面での不安が残るうえ、大手の販売先でも対応がギリギリまで分からない先もあったため、今後トラブルが起きないかなど、とにかく不安が多い」(機械・器具卸売)や「準備は進めてきたが、後々不備が発覚するかもしれないと不安」(機械製造)など、準備を進めてスタートを切っていても、不安を抱える企業は多い。
懸念事項の内容については、「業務負担の増加(他業務への影響含む)」が71.5%と7割を超えて最も高かった。次いで、「社内での理解・連携不足」(51.0%)、「仕入先への対応」(50.1%)が 5割台で続いた。そのほか、「請求書の受領時のミス」(36.1%)などが上位にあがった。
「作業時間が大幅に増加し、残業が増えてスタッフが疲弊している」(飲食料品小売)、「仕入先などのインボイスの確認、免税事業者への対応でこれからが大変。業務量は増加する」(金融)など、事務負担の増大などに戸惑う声も聞かれた。2024年1月からは新たに改正電子帳簿保存法の対応も必要になるため、事務の負担が重くなるとも言われ、インボイス制度が定着するには今しばらく時間を要することが考えられる。インボイス制度に対応するなかで企業の不安や混乱が深まるケースが出てくることも十分に予想されるだけに、課題解決に向けたサポートに加え、デジタル化の推進につながる仕組みづくりが急がれる。