令和4年度査察概要 103件を告発、脱税額は総額約128億円
2023/06/20
国税庁はこのほど、令和4年度における「査察の概要」を公表した。
それによると、査察の処理件数は139件で、そのうち103件を告発した。脱税額の総額は約128億円、告発した査察事案に係る脱税総額は約100億円だった。1件当たりの脱税額は総額分で9200万円、告発分は9700万円。告発率は74.1%と前年度の72.8%より1.3ポイント上昇し、引続き高水準となった。
令和4年度の重点事案と位置付けた消費税事案の告発件数は34件。そのうち、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い「消費税不正受還付事案」については16件を告発。その不正受還付額は13億4700万円となり、前年度の4億3400万円から約9億円も増加した。
たとえば、A社など数社は、不正指南者から指示されたとおり、A社など各社の代表者からパワーストーンを仕入れたかのように仮装し、架空の課税仕入れを計上するスキームを利用して、不正に消費税などの還付を受けようとしたとして、A社など数社および代表者のほか、不正受還付スキームを考案した指南者を告発。なお、所轄税務署において還付を保留していたため未遂犯として告発した。
そのほかの重点事案として「無申告ほ脱事案」は15件を告発。たとえば、Bは親族の死亡にともない多額の財産を他の相続人とともに共同相続したが、相続財産である現金を複数の場所に隠匿した上で、相続税の申告書を申告期限までに提出せずに、多額の相続税を免れていた。
「国際事案」では17件を告発。不正加担者が日本における代表者を務める外国法人を利用し、法人税または所得税を免れた国際事案を多数告発している。
令和4年度中に一審判決が言い渡された件数は61件で、そのすべてが有罪判決となっており、そのうち3人に実刑判決が出されている。実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役1年4月、ほかの犯罪と併合されたものが懲役2年8月だった。
たとえば、他人名義で外国為替証拠金取引(FX)を行うことにより所得を秘匿し、確定申告書を提出することなく法定納期限を徒過させ所得税を免れた者(無申告ほ脱犯の再犯者)に対して、懲役1年4月の実刑判決が出されている。その者は、FX取引により多額の利益を得ていたが、数十もの他人名義で取引を行うことで所得を秘匿し、確定申告書を提出することなく法定納期限を徒過させ所得税を免れていた。