国税庁 「私道供用宅地」の最高裁判示を踏まえ還付を呼びかけ
2017/07/24
国税庁はこのほど、「財産評価基本通達24(私道の用に供されている宅地の評価)における『歩道状空地』の用に供されている宅地の取扱いについて」と題したお知らせをホームページ上に公表した。
私道の用に供されている宅地(以下、私道供用宅地)については、その評価をめぐり、最高裁は平成29年2月28日、私道供用宅地ではなく、各共同住宅の敷地(貸家建付地)として評価すべきとした高裁の判断を「是認することはできない」とした(争いの詳細は本サイト『税務の勘所』3月8日配信に掲載)。最高裁判決の判示は次のとおり。
私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。
これを本件についてみると、本件各歩道状空地は、車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また、本件各歩道状空地は、いずれも本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、本件各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして、これらの事情に照らせば、本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。
国税庁は、この最高裁判決の判示事項を踏まえ、「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱いとして、①都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、②道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、③居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地』については、評価通達24に基づき評価するという内容をホームページで示している。
また、上記の取扱いは「過去に遡って適用されますので、これにより、過去の相続税または贈与税の申告の内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができます。なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください」と呼びかけている。