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富裕層の申告漏れは過去最高の980億円 令和4事務年度の所得税調査状況

2023/12/05

 国税庁では、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資などを積極的に行っている個人など「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に税務調査を実施しているが、令和4事務年度(今年6月末までの1年間)における実地調査(特別・一般、以下すべて同じ)は2943件(前事務年度2227件)だった。

 1件当たりの申告漏れ所得金額は3331 万円(同 3767 万円)で、所得税の実地調査全体の 1456 万円に比べて 2.3 倍だった。申告漏れ所得金額の総額は、過去最高だった昨年をさらに上回り 980 億円(同 839 億円)となっている。

 1件当たりの追徴税額は 623 万円(同 1067 万円)で、所得税の実地調査全体の 274 万円に比べて 2.3 倍となった。追徴税額の総額は 183 億円(同 238 億円)に上った。特に、海外投資等を行っている「富裕層」に対して1件当たりの追徴税額は1068 万円(同 2953 万円)で、所得税の実地調査全体の 274万円から 3.9 倍増えている。

 一方、国税庁では、経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施している。

 令和4事務年度においては、2784 件(同 2043 件)に実地調査を実施した。1件当たりの申告漏れ所得金額は、過去最高だった昨年をさらに上回り 3720 万円(同 3690 万円)となっており、所得税の実地調査全体の 1456万円(同 1613 万円)と比べて 2.6 倍となった。申告漏れ所得金額の総額も過去最高の 1036 億円(同 754 億円)となった。1件当たりの追徴税額は 743 万円(同 1119 万円)で、所得税の実地調査全体の 274 万円(同 323 万円)と比べ 2.7 倍となった。追徴税額の総額は 207 億円(同 229 億円)だった。

 そのほか、インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミーなど新分野の経済活動に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しても、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施している。

 シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況としては、令和4事務年度に1324 件(同 839 件)の実地調査を実施。1件当たりの申告漏れ所得金額は、1508 万円(同 1382 万円)。申告漏れ所得金額の総額は 200 億円(同 116 億円)だった。1件当たりの追徴税額は 320 万円(同 266 万円)。また、追徴税額の総額は 42 億円(同 22 億円)だった。

 暗号資産(仮想通貨)などの取引を行っている個人に対する調査状況としては、令和4事務年度は615 件(同 444 件)の実地調査を実施。1件当たりの申告漏れ所得金額は3077 万円(同 3659 万円)。申告漏れ所得金額の総額は 189 億円(同 162 億円)。1件当たりの追徴税額は 1036 万円(同 1194 万円)。追徴税額の総額は 64 億円(同 53 億円)だった。

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