平成29年度税制改正大綱の注目ポイント ~個人所得課税~
2017/01/24
<配偶者控除等の見直し>
政府税制調査会では、配偶者控除及び配偶者特別控除について様々な議論がありましたが、平成28年12月8日に公表された平成29年度税制改正大綱では、高所得の納税者(控除対象配偶者の夫と想定)には配偶者控除を認めない仕組みに変えるとともに(増税措置)、パートで働く主婦(控除対象配偶者と想定)を対象として配偶者特別控除を見直す仕組みに変えることになり(減税措置)、平成30年分から適用されます。
今までは、納税者が配偶者控除(配偶者が専業主婦などの場合)を受ける際に、納税者の収入制限はありませんでしたが、今後は納税者の給与収入が1,120万円(合計所得金額900万円)を超えると配偶者控除額が逓減し、給与収入が1,220万円(合計所得金額1,000万円)を超えると配偶者控除額が0になる仕組みに変わります。
また、パートで働く主婦には、いわゆる「103万円の壁」がありましたが、今後は「103万円が150万円」に引き上げられます。
今までは、パートで働く主婦の給与収入が103万円を超えると配偶者控除が受けられないことから、103万円を超えないための就業調整が行われていたようですが、今後は150万円までであれば従前と同様38万円の控除を受けることができます(配偶者控除でなく配偶者特別控除の対象になります)。
ただし、パートで働く主婦の夫に対し、増税措置の記述と同様の収入制限(高所得の納税者に対する配偶者特別控除の制限措置)が設けられることに留意する必要があります。
なお、今回の見直しは改革の第一弾であり、今後はフルタイムで働く主婦も対象とした検討が行われることになっていますので、先生方から関与先などへ情報提供すべきでしょう。
<金融・証券税制>
金融・証券税制は、平成26年からスタートしたNISAが着実に普及しているようですが、更なる普及のため、少額からの積立・分散投資に適した「積立NISA」の創設が金融庁から要望されていましたが、その要望が実現することになりました。
「積立NISA」は、年間の投資上限額40万円・非課税期間20年間で、現行NISAとは選択制になります。
<住宅・土地税制>
住宅・土地税制では、リフォーム税制を拡充するため、一定の耐久性向上改修(①小屋裏、②外壁、③浴室・脱衣室、④地盤に関する劣化対策工事など)を行った場合には、今までのリフォーム税制と同様に、ローンを利用する場合又は自己資金による場合の区分に応じて所得税額から一定の税額控除が認められることになります。
<その他>
今までは、サラリーマンが会社からの借入金でマイホームを取得したときに、その借入金の年率が1%未満の場合には、住宅ローン控除が受けられませんでした。しかし、昨今の金利情勢からその見直しが行われ、年率1 % 未満が0.2%に引下げられることになりました。
また、医療費控除の適用を受けて所得税額の還付を受けるためには、確定申告書を提出するときに、医療費の領収書を添付する必要がありましたが、平成30年1月1日以後は、その領収書の添付に代えて医療費の明細書を添付することになります(セルフメディケーション税制も同様です)。
したがって、今後は領収書の提出は不要になりますが、5年間は保管し、税務署から提出を求められたときには提出しなければならないことに留意しなければなりません。
(解説:中島孝一税理士)