日本居住者の金融口座情報 190万件を87カ国・地域から受領
2022/02/16
国税庁はこのほど、令和2事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要を公表した。
租税条約等に基づく情報交換には、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」「要請に基づく情報交換」の3つの類型があり、今回で3回目となる金融口座情報(CRS情報)の「自動的情報交換」では、日本の居住者に係る金融口座情報190万6896件(前事務年度:205万8777件)、口座残高12兆6000億円を87カ国・地域の外国税務当局から受領した一方、日本の非居住者に係る金融口座情報65万558件、口座残高6兆8000億円を国税庁から70カ国・地域に提供した。
CRS 情報の自動的情報交換の活用例として、次の内容が紹介されている。
・受領した CRS 情報から、X国所在の法人甲の金融機関の口座及び当該法人の実質的支配者が相続人Aであることを把握した。当該法人について登記情報を確認したところ、相続発生前に、当該 法人の出資持分の名義が被相続人Bから相続人Aに変更されていた事実が判明した。調査の結果、 被相続人Bは、当該法人の出資持分の名義変更後も、当該法人名義での資産運用を継続していたことなどから、当該出資持分は被相続人Bの相続財産であったことが判明した。また、相続人Aは、当該出資持分が相続財産であることを認識しながら、相続財産から意図的に除外し、相続税の申告を行っていなかったことが判明した。さらに、当該法人の所得に関し、外国子会社合算税制による被相続人Bの雑所得も申告漏れとなっていることが判明した。
CbCR(Country by Country Report:国別報告書)の自動的情報交換では、2186社分のCbCRを53カ国・地域の外国税務当局から受領し、898社分のCbCRを国税庁から57カ国・地域に提供した。
法定調書により把握した非居住者等への支払についての情報11万2千件を外国税務当局から受領した一方、68万7千件を外国税務当局に提供した。
法定調書情報の自動的情報交換の活用例では、次の内容が紹介されている。
・X国の税務当局から提供された資料を基に、日本の居住者Cの申告内容を検討したところ、X国のY銀行に預け入れた預金に係る受取利子が日本で申告されていなかったことを把握した。
次に、「自発的情報交換」は、国際協力の観点から自国の納税者に対する調査などの際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するもの。外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は2万351件となり、前年度より約52倍も増加したが、国税庁では「特定の国から大量の情報を受領したことが要因」としている。
国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は前年度と同様の106件だった。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域への提供が84件と最も多くなっている。
最後に、国税庁から外国税務当局に行った「要請に基づく情報交換」の件数は638件となり、前事務年度より25件増加した。地域別にみると、日本と経済的関係が強いアジア・大洋州の国・地域向けの要請が510件となり、約8割を占めている。外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の件数は251件で、平成29事務年度以降、毎年増加している。
要請に基づく情報交換の活用例では、次の内容が紹介されている。
【外国税務当局から受領した情報の活用例】
・内国法人Dの法人税調査において、法人DがX国の複数の法人に対して、多額の不動産開発に関するコンサルタント料を計上している事実を把握した。当該コンサルタントに関する契約書に記載されている相手先と、請求書の発行元や支払先が異なっていたほか、コンサルタント料総額の約半分が長期間未払いとなっているなど不審点が見られたことから、X国税務当局に対して、当該コンサルタント取引に関する資料の提供を要請した。
その結果、架空の契約書を用いて、役務提供の事実がないコンサルタント料を計上していた事実が判明した。