株式取得で親会社変更、支配関係の継続は?
2018/01/05
名古屋国税局は昨年12月21日、「株式の保有関係が変更している場合の支配関係の継続要件の判定について」の文書回答を公表した。
それによると、照会者は飲食業を営んでおり、甲(個人)からA社(飲食業、4月決算法人)およびB社(飲食業、2月決算法人)の発行済株式の100%を取得することを予定している。甲は、20年以上前にA社およびB社を設立して以来、その発行済株式の100%を保有しており、甲と照会者との間に資本関係や取引関係はない。
照会者は、平成29年11月25日に甲からA社およびB社の株式の全部を取得する予定だが、両社の事業内容が類似しているため、経営合理化の観点から、平成30年2月にA社を合併法人、B社を被合併法人とする吸収合併を行うことを予定している。なお、本件合併は適格合併に該当するが、法人税法第57条第3項に規定する共同で事業を行うための合併には該当しない。
B社は未処理欠損金額を有しており、この合併に伴い、A社が未処理欠損金額を引き継ぐためには、A社とB社との間に平成24年5月1日(合併法人であるA社の合併の日を含む事業年度開始の日の5年前の日)から継続して支配関係があることが要件となる。
甲は、20年以上前にA社とB社を設立して以来、その発行済株式の50%超(100%)を保有しているため、A社とB社との間には、平成24年5月1日(合併法人であるA社の合併の日を含む事業年度開始の日の5年前の日)から本件株式取得の前日まで継続して、甲との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係(支配関係)がある。
また、照会者は、本件株式取得の日に、A社およびB社の株式の50%超(100%)を甲から取得するため、A社とB社との間には、同日から本件合併の日まで継続して、照会者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係(支配関係)があることとなる。
ただ、照会者の株式取得により、A社およびB社の親会社が変わるため、そのようなケースでも平成24年5月1日から本件合併の日まで「継続して支配関係がある」として、未処理欠損金額を引き継ぐことができると考えてよいかというのが今回の照会だ。
事前照会では、国税庁のホームページに掲載された今回の類似の事例が取り上げられている(国税庁HP 質疑応答事例「株式の保有関係が変更している場合の青色欠損金額の引継ぎ」)。そこには、合併法人と被合併法人の100%親会社である法人が、他の法人に吸収合併された事例が掲載されており、親会社が変わった場合であっても、合併法人と被合併法人との間の支配関係は、合併前の100%親会社との間で支配関係が生じた日から継続するとされている。
この質疑応答事例は、合併を前提とし、他の法人が100%親会社であった法人の株主としての地位を包括承継することにより、支配関係の継続が認められているようにも考えられ、照会者は、単なる株式の取得により親会社が変更する場合でも、支配関係の継続が認められるのか疑義が生ずるとしていた。
しかし、株式取得によって親会社は変わるものの、株式取得の前後を通じてA社とB社との間の支配関係が継続していることに変わりはない。そこで、A社とB社との間には、平成24年5月1日(合併法人であるA社の合併の日を含む事業年度開始の日の5年前の日)から継続して支配関係があり、A社は、B社が保有する未処理欠損金額を引き継ぐことができると解して差し支えないかと照会したところ、名古屋国税局は、照会に係る事実関係を前提とする限り差し支えないと回答した。