税務コンプライアンスの維持・向上へ 国税庁 税務CGの事務運営指針を公表
2016/07/27
大企業の税務コンプライアンスの維持・向上には、トップマネジメントの積極的な関与・指導の下、大企業が自ら税務に関するコーポレートガバナンスを充実させていくことが重要で効果的である――。こうした観点から、国税庁では、税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)の充実を促進してきたが、その取組の事務実施要領の制定について事務運営指針をこのほど公表した。
大企業の経済活動は、日本経済に占めるウェイトが大きく、申告所得金額も多額である。また、企業グループ全体や下請けの中小企業等の税務コンプライアンスに与える影響も大きい。さらに、近年は国内外において、コーポレートガバナンスの充実が重要との認識が高まり、法整備を含め、その充実のための環境整備が進展している。
税務CGとは、税務についてトップマネジメントが自ら適性申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること。税務CGを確認する対象法人は、国税局特別国税調査官所掌法人だ。
次回調査までの調査間隔を1年延長
確認方法としては、まず、調査の機会を利用して対象法人に税務CGの「確認表」の記載を依頼。確認項目は、①トップマネジメントの関与・指導、②経理・監査部門の体制・機能の整備・運用、③内部牽制の働く税務・会計処理手続の整備・運用、④税務に関する情報及び再発防止策の社内への周知、⑤不適切な行為の抑制策の整備・運用の5項目。
調査(査察)部長または次長が面談を担当し、担当特官が同席する。そして、調査結果の概要を説明し、その是正事項の再発防止に向けた取組を含め、税務CGについて、改善が必要な箇所に関して、効果的な取組事例を紹介しつつ、トップマネジメントとの意見交換を実施する。
税務CGの判定結果は、特別国税調査官所掌法人の調査必要度の重要な判断材料のひとつとして活用。税務CGの状況が良好で、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査必要度が低いと判断される法人については、調査省略時に一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引を自主的に開示し、当局がその適性処理を確認することを条件に、次回調査までの調査間隔が1年延長される。
なお、国税庁では「大企業の税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組事例」を公表している。
上記の確認項目の①では、「トップマネジメントが遵守の徹底を指示しているコンプライアンスガイドブックに、税務上問題となる取引をケーススタディ形式で掲載し、全社員に配布」、「税務調査中に指摘された事項に類似する取引の有無について、全社に徹底調査を指示」などがある。また、②では「税務調査で指摘事項があった事業部門に対しては、次期決算前に経理部署が臨場して模擬税務調査を行い、誤りがあればトップマネジメントに報告し、再指導の上、是正を徹底」などが紹介されている。