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約束手形の利用廃止へ 中企庁の検討会が報告書で示す

2021/03/10

 中小企業庁が設置した「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」の6回目となる検討会が2月19日に開催され、報告書の中で約束手形の利用を廃止する方針を示した。

 約束手形は取引先への支払を猶予してもらい、振出人側の資金繰りの負担を軽減する手段として用いられてきた。特に高度成長期においては、発注企業は資金の不足を補うため原材料の買い入れや下請事業者への支払いに約束手形を用いる企業間信用が大きな役割を果たした。

 しかし、90年代に入りそれまで資金不足であった法人部門(民間非金融法人企業)が資金余剰に転じたことや、資金調達手段の多様化、インターネットバンキングの普及などにより支払手形の発行残高は90年度の約107兆円をピークに、足下は25兆円まで減少。ただし、2007年度以降は下げ止まってきており、近年は若干上昇傾向にある。

 とはいえ、令和2年度アンケートによると、現金振込のサイトが約50日であるのに対し、約束手形は約10日と現金取引と比べて約2倍。現金の支払期日に約束手形が振り出される取引も多く、その場合は3倍の長さ(約150日)となる。支払サイトが長いことは、その間の利息や割引料が支払われていない取引慣行と併せると、取引先企業に資金繰りを負担させるという弊害のともなう支払手段であるともいえる。

 また、発行から保管、流通(手形交換)、取立てを、現物である「紙」である約束手形を用いて行われる。そのため、手形の振出人、受取人、金融機関のそれぞれにおいて「紙幣」と同等の管理が必要となり、その過程では様々なコストとリスクが存在する。

 こうした問題を踏まえ、報告書には「約束手形の利用を廃止していくべきである」との方針が盛り込まれた。

 支払サイトを短くするためには、約束手形よりも支払サイトの短い決済手段(銀行振込)への切り替えが進められるべきであり、発注企業の資金繰り負担などから直ちに切り替えができない場合であっても、少なくとも「紙」による決済をやめる観点から、電子的決済手段(電子記録債権など)への切り替えを進めるべきとしている。

 さらに、約束手形を使う理由は支払側、受取側ともに「長年同じ慣習を続けている」が半数程度で最大の理由となっており、個社の努力だけでなく、業界の慣習を変えていく取り組みが必要だと指摘。業界全体の取り組みを引き出す手法として、国のガイドラインや産業界による自主行動計画が有効であることを示している。

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