規制改革の第1次答申 大法人の電子申告利用率100%へ
2017/05/31
政府の規制改革推進会議は5月23日、規制改革推進に関する第1次答申を取りまとめて安倍晋三首相に提出した。
今回取りまとめた「規制改革推進に関する第1次答申~明日への扉を開く~」によると、行政手続コストの削減に向けて、次の9分野について削減目標達成のための計画を策定し、取り組むとしている。①営業の許可・認可に係る手続、②社会保険に関する手続、③国税、④地方税、⑤補助金の手続、⑥調査・統計に対する協力、⑦従業員の労務管理に関する手続、⑧商業登記等、⑨従業員からの請求に基づく各種証明書類の発行。
削減目標は、事業者の作業時間を3年間(事項によっては5年まで許容)で20%削減を目指し、「国税」と「地方税」については、大法人における電子申告利用率100%などの別途の数値目標を設定した。
各分野における規制改革の推進をみると、農業分野では、「農地における新たな農業生産施設・設備の利活用の促進」に関する内容が盛り込まれた。具体的には、農業生産に係る技術革新が進み、コンクリート敷の農業用ハウスや植物工場などで、多様な手法で青果などを効率的に生産するケースがあるが、現行の農地にこれらの施設を設置すると、農地法上、農地に該当しなくなるため、農地転用手続が必要となる。
しかし、農地に農業用ハウスを設置する場合など、農業生産のために利用を継続する場合には、農地と同様の取扱いをすべきではないかとの指摘があった。そこで、農地について、その将来にわたる利活用の可能性を維持しつつ、新たな技術革新を活かした農業生産を支える多様な施設・設備の設置や運用を行う場合の農地法における取扱いについて検討するとした。
次に、人材分野においては、「転職」をキーワードとして、自発的な労働移動を円滑に進める観点から、①転職先がより見つけやすくなる仕組みづくり(ジョブ型正社員の雇用ルールの確立、職業紹介事業を行う場合における行政手続の簡素化)、②転職して不利にならない仕組みづくり(法定休暇付与の早期化)、③安心して転職できる仕組みづくり(使用者の労働法知識向上の促進)について、具体的な規制改革項目を取りまとめた。
また、2020 年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、拡大する訪日客に十分に対応するため、旅館業に関する規制の見直しとして、客室の最低数の規制や寝具の種類の規制などの撤廃が盛り込まれた。
そのほか、「不動産登記情報の公開の在り方」として、現在、不動産登記は有料で提供されているが、オープンデータ推進の観点から無償公開を含め、よりオープンに情報を提供すべきとの指摘があるほか、土地所有者情報など一定の情報について、データの整備と公開を進めることで、不動産市場の活性化などを図るべきとの指摘もある。そこで、不動産データにおける登記情報の重要性に鑑み、個人情報保護に留意した上で、国民の利便性向上の観点から、情報範囲を限定した無償公開の可否も含めて登記情報の公開の在り方について検討・見直しを行っていく。
今回の答申を受け、国としては規制改革実施計画を策定し、取りまとめられた改革事項を早急に実施していく構えだ。