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10年後の税務行政 税務相談や調査にAIをフル活用

2017/07/07

 近年、所得税の申告件数や法人数が増加する一方で、国税職員の定員は減少傾向にある。しかも、経済取引がグル―バル化し、資産運用も多様化しており、国税当局の調査・徴収は複雑かつ困難化している。さらに、消費税軽減税率制度やインボイス制度など新たに実施される制度への対応のため、業務量の増加も見込まれているところだ。

 そこで、国税庁はさきごろ、約10年後の税務行政のイメージを示した「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を公表。今後の方向性として、ICT(情報通信技術)・AI(人工知能)やマイナポータルを活用することで、納税者の利便性を向上させるとともに、課税・徴収の効率化・高度化を進めていくスタンスを明らかにした。

 そこには、大きな2つの取組みとして、「納税者の利便性の向上(スムーズ・スピーディ)」と「課税・徴収の効率化・高度化(インテリジェント)」が挙げられている。

 まず、「納税者の利便性の向上」では、マイナポータルやe-Taxのメッセージボックスを通じて、個々の納税者のニーズに合わせてカスタマイズした税情報をタイムリーに配信できるようにする。例えば、不動産を売却した人への申告の案内や、災害発生時に適用可能な税の減免制度のお知らせなど、これらの情報が必要と思われる納税者に対して迅速に提供する。

 また、現在、税務相談は電話や対面で行われているが、相談チャネルの多様化としてメールやチャットを活用するほか、相談内容をAIが分析し、システムが自動的に最適な回答を行う仕組みも整えていく。

 次に、「課税・徴収の効率化・高度化」では、国税当局が保有する資料情報データ等と納税者の申告内容をシステム上でチェックすることで、申告漏れや適用誤りを効率的に把握する。例えば、所得税では様々な取引等に関する情報と申告内容を、相続税等では財産所有情報等と申告内容をシステム上で自動的にマッチングさせることで、申告漏れ所得・財産をこれまで以上に迅速かつ効率的に把握していく。

 さらに、調査の必要性が高い大口・悪質な不正計算が想定される事案を的確に選定するため、過去の接触事績や資料情報のシステム的なチェックに加え、統計分析の手法を活用し、納税者ごとの調査必要度を判定する。

 徴収では、ビッグデータやAIを活用し、個々の納税者についての納付能力を判定するほか、過去の接触や滞納処分の状況などを踏まえ、優先着手事案の選定、最適な接触方法(電話催告、文書催告、徴収官が臨場しての滞納整理等)および滞納整理方針がシステム上に的確に提示されるようにする。

 すでに、シンガポールでは、AIを活用した質問応答システムを導入しているほか、アメリカでも、滞納者との接触方法の自動判定システムが取り入れられるなど、税務行政にICTやAIが取り入れられている。国税庁は、今回公表した「税務行政の将来像」について、今後、予算の制約も踏まえて詳細な検討を行っていくとともに、環境変化に応じて見直しを行っていくとしている。

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