佐賀県の企業版ふるさと納税に関する照会に文書回答
2021/03/30
福岡国税局はこのほど、佐賀県から照会があった「企業が特定のCSOに対し寄附することを希望して支出する寄附金に係る法人税法上の取扱い」についての文書回答を公表した。
照会者の佐賀県では、CSO (Civil Society Organizations市民社会組織の略で、NPO法人や市民ボランティア団体など)の活動推進による協働社会づくりのため、個人によるふるさと納税(NPO等指定寄附)を活用して県内CSOの資金調達を支援するなど、CSOの経営基盤強化や活動活性化に取り組んでいる。
具体的には、佐賀県が登録した県内CSOの中から、寄附者が応援したい団体を指定して県に寄附をし、寄附者がふるさと納税の税額控除等の適用を受け、県に寄せられた寄附金を「佐賀県ふるさと寄附金基金」に積み立て、これを取り崩して原則として寄附者が指定したNPO法人等へ交付するというものだ。
このような中、佐賀県で活躍しているNPO法人から、新たに地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を活用した資金調達に取り組み、さらなる活動推進および地域課題解決の推進を図りたいとの声があがった。しかし行政での実施が難しく、CSOだからこそ実施できる地域課題解決につながる取組を佐賀県が寄附事業として設定し、その取組を行うCSOへの寄附金につき企業版ふるさと納税を活用して募集するスキームの構築を検討することとした。
スキームとは、企業版ふるさと納税活用型CSO地域課題解決支援事業として、県内CSOを対象に、企業版ふるさと納税を活用して実施する地域課題解決につながる事業を公募し、県で審査・採択する。県で採択事業への寄附募集を広報するとともに、事業実施主体のCSOが採択事業への寄附を企業へ働きかけ、企業が当該CSOが実施する採択事業を指定して県へ寄附を行い、この寄附金を原資として、県から採択事業を実施するCSOへ寄附金として交付する。そして、寄附金を支出した企業のうち、佐賀県に本店が所在する企業は法人税法第37条第3項の規定によりその支出金額の全額が損金算入となり、県外に本店が所在する企業は、法人住民税や法人事業税の税額控除のほか租税特別措置法第42条の12の2または第68条の15の3の規定による法人税額の特別控除の適用により、法人税法第37条第3項の損金算入による法人税の軽減効果と合わせて最大で寄附額の約9割が軽減され実質的な企業の税負担が約1割になる、というものだ。
法人税基本通達9-4-4(最終的に国等に帰属しない寄附金)では「国等に対して採納の手続を経て支出した寄附金であっても、その寄附金が特定の団体に交付されることが明らかであるなど最終的に国等に帰属しないと認められるものは、国等に対する寄附金には該当しないことに留意する」とされている。
佐賀県において導入を予定している事業は、企業が特定のCSOへ寄附することとなる採択事業を指定して県に対する寄附を行うことから、上記法人税基本通達のトンネル寄附に該当し、佐賀県に対する寄附には該当しないのではないかとも考えられる。
そこで、佐賀県としては、企業が特定のCSOへ寄附することを希望して支出する寄附金についての取扱いを明らかにすることで、県内CSOの活動に対する企業からの資金協力を得やすくし、CSO活動の更なる推進や地域課題解決の推進を図りたいと考え、本件企業版ふるさと納税活用型CSO地域課題解決支援事業に対して企業が支出する寄附金が、法人税法第37条第3項第1号の「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当するものと解して差し支えないか、また、当該寄附金は、佐賀県外本店の企業であれば、租税特別措置法第42条の12の2第1項又は第68条の15の3第1項に規定する特定寄附金に該当するものと解して差し支えないかという照会が行われた。
これについて福岡国税局は、いずれも照会に係る事実関係を前提とする限り、差し支えないと回答している。