日本居住者の金融口座情報245万件を93カ国・地域から受領
2025/02/20
国税庁はこのほど、令和5事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要を公表した。

租税条約等に基づく情報交換には、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」「要請に基づく情報交換」の3つの類型があり、今回で6回目となる金融口座情報(CRS情報)の「自動的情報交換」では、日本の居住者に係る金融口座情報245万5288件(前事務年度:252万6181件)、口座残高14兆2000億円を93カ国・地域の外国税務当局から受領した一方、日本の非居住者に係る金融口座情報51万782件(同:53万2037件)、口座残高5兆6000億円を国税庁から80カ国・地域に提供した。
受領したCRS情報及び要請に基づく情報交換の活⽤例として、次の内容が紹介されている。
【CRS 情報の自動的情報交換の活用例】
・受領したCRS情報から、法人役員AがX国にある銀⾏⼝座に多額の預⾦を保有しながら国外財産調書を提出せず、確定申告にも当該預⾦に関する利⼦等の所得を反映していない事実を把握したため、調査に着手した。
法人役員Aは、調査においても国外に預⾦を保有する事実を認めなかったことから、事実確認のためにX国の税務当局に対して当該預⾦⼝座の運用状況等に関する情報提供の要請を⾏い、関連する情報を入手した。
受領した情報を基に調査対象者を追及したところ、実際には当該⼝座の運用によって多額の利益が発⽣していたものの、この所得について確定申告を⾏っていなかったことを認めた。さらに、預⾦の一部について親族に贈与していた事実が確認されたため、当該親族に贈与税を課した。
CbCR(Country by Country Report:国別報告書)の交換では、外国に最終親会社等がある2315グループのCbCRを58カ国・地域の外国税務当局から受領し、日本に最終親会社等がある927グループのCbCRを国税庁から68カ国・地域に提供した。
法定調書により把握した非居住者等への支払についての情報13万483件を外国税務当局から受領した一方、75万646件を外国税務当局に提供した。
次に、「自発的情報交換」は、国際協力の観点から自国の納税者に対する調査などの際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するもの。外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は756件。国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は88件だった。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域への提供が54件と最も多くなっている。
最後に、国税庁から外国税務当局に行った「要請に基づく情報交換」の件数は737件となり、前事務年度より96件増加した。地域別にみると、日本と経済的関係が強いアジア・大洋州の国・地域向けの要請が560件となり、約8割を占めている。外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の件数は252件で、前事務年度から124件増加した。
要請に基づく情報交換の活用例では、次の内容が紹介されている。
【外国税務当局から受領した情報の活用例】
・確定申告において暗号資産取引に係る雑所得を申告していた個人投資家Bの調査に着手したものの、投資家Bは暗号資産取引に係るデータを保存していたUSBメモリを紛失したため、取引データの復元ができないと主張し、申告⾦額の基となった暗号資産取引内容等の確認ができなかった。取引内容等の解明のため、Y国の税務当局に対して情報提供要請を⾏ったところ、取引内容に関する資料を受領できたため、当該資料を基に多額の申告漏れの事実を把握した。