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保険・不動産Vital Point of Tax

路線価によらない不動産評価額 東京局管内の認容件数は?

2025/09/04

 東京国税局が管轄する東京都、神奈川県、千葉県、山梨県の税務署において、路線価によらない不動産評価額で相続税や贈与税の申告・更正の請求を行った相続人(件数)や認容率が明かになった。これは、情報公開請求により開示された当局の資料により判明したもの。

 国税当局では、これらを「路線価等によらない申告等事案」として一括管理している。具体的には、相続税や贈与税の申告・更正の請求に当たって、国税局の算定した路線価より低い評価額を時価として、不動産鑑定評価に基づき不動産の評価を行っている事例のことだ。

 資料によると、令和3事務年度(2021年7月~2022年6月)と令和4事務年度(2022年7月~2023年6月)における路線価等によらない申告等事案の発生・処理状況・認容件数の推移は表のとおり(カッコ内は更正の請求によるもの)。

 処理された事案のうち、当局が路線価等によらない不動産評価を認めた認容件数の割合(認容件数÷処理件数)は、令和3事務年度で約71%、令和4事務年度では約90%となっている(件数や認容率は筆者集計による)。

 このような路線価等によらない申告等が認められるようになった背景には、バブル崩壊後の急激な地価下落期において、1月1日時点を基準に算定される「地価公示の8割」とされる路線価では、年間20%超の下落がある地域の実態をカバーできないケースが多く見られ、高止まりする路線価評価によって相続土地に対する過大な相続税負担が社会問題となったことがある。そして、国税庁が「相続税の申告に際しては、必ずしも路線価に基づく必要はない」との見解を示したことで、路線価等によらない申告の容認につながる大きな転機となった(参議院大蔵委員会の前畑議員の質疑に対する政府委員(国税庁)の答弁 平成4年3月26日)。

 東京国税局では、こうした評価方法の適用について、「当局の評価に対する信頼を損なわないよう、評価額の根拠や路線価等によらないことが相当と認められる特別の事情の有無を確認し、適切に処理している」と説明している。

 加えて、納税者から個別照会があった場合には、「特別の事情」の有無を確認したうえで、財産評価基本通達に基づく評価方法を案内しており、「通達や路線価で対応できない特別の事情が認められない限りは、原則どおりの評価を適用する」との方針を示している。

(表)

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