家族一人ひとりの本音を聞く そこから相続支援が始まる
2026/07/27
たかやまあゆみ税理士事務所(東京・港区)
代表 髙山 亜由美 税理士
相続支援において、家族一人ひとりの本音を丁寧に聞き出すことを大切にしている髙山亜由美税理士。
また、女性のお客様にも安心してご相談いただけるよう、信頼できる女性士業に声をかけて「女性相続support」を立ち上げ、ワンストップで対応できる体制を整えている。

――相続・事業承継支援を専門とされたきっかけを教えてください。
大手税理士法人に勤務していた頃は法人税務を担当することが多かったのですが、先輩から「髙山さんは相続支援のような、もっと人に近い仕事が向いているんじゃない」と勧められ、もともと税理士試験の勉強でも相続税は特に面白いと感じていたこともあり、相続を多く扱う事務所へ転職しました。実際に相続案件に携わってみると、人の思いや人生に寄り添う仕事だと実感し、その奥深さとやりがいに魅力を感じ、この分野で経験をたくさん積んでいきたいと思うようになりました。
――確かに、経験は大事ですよね。
どの分野も経験は大事ですが、相続支援は多くの経験を重ねることで、初めて専門性が身につく分野だと思っています。特に、相続は案件ごとに家族関係や財産の状況が異なり、同じ事案はひとつとしてありません。だからこそ、お客様に最適なアドバイスをするためには、知識だけでなく、経験の積み重ねが何より大切だと思っています。
――独立される際、不安はありませんでしたか。
正直、不安だらけでしたね。でも、勤務時代に保険会社での営業ルート開拓や研修を任せていただいた経験が、自分の大きな支えになりました。最初は保険会社の小さな営業部の朝礼で、毎週10分ほどの研修を行わせてもらいましたが、なかなか反応をいただけませんでした。でも、「相手が本当に知りたいことは何か」を考えながら内容を工夫し、数か月にわたって研修を続けていくうちに、少しずつ相談やご紹介をいただけるようになり、ご縁にも恵まれて、独立後も全国各地でセミナー講師としてお声がけいただくようになりました。
――現在はどのような相続支援をされているのでしょうか。
年間数十件の相続税申告をご依頼いただいていますが、申告案件よりも生前対策のご相談のほうが圧倒的に多いですね。ご相談の多くは、保険会社や不動産会社などからのご紹介によるものです。ご紹介くださる方にとって、お客様は大切な存在ですので、「紹介してよかった」と思っていただけるよう、お客様のご相談に丁寧に向き合い、連絡の頻度にも気を配りながら、きめ細かな対応を心がけています。また、お客様からお知り合いをご紹介いただけると、ご期待にお応えできたのだと感じ、とても励みになります。
――相続支援に携わる中で大切にされていることはありますか。
お客様が何に不安を感じているのか、ご家族それぞれが何を望んでいるのかを丁寧に聞き取ることを大切にしています。例えば、ご主人は「二次相続まで見据えて、できるだけ子どもに財産を渡したい」と考えていても、奥様は「税金のことも心配だけど、まずは自身の生活資金として確保しておきたい」と思われる方もいます。同じご家族でも、立場が違えば考え方も変わってくるわけです。ですから、ご夫婦や親子が一緒に相談に来られても、私は一人ずつお話をお伺いするようにしています。一対一だからこそ、本音を話していただけることもありますし、ご家族のお気持ちを十分に把握しないまま対策を進めると、相続が始まってから考え方の違いが表面化し、思わぬトラブルにつながることもあります。
――ご家族と一緒にいると本音で話せないこともありますよね。
以前、事業承継のご相談で「孫に会社を継がせたい」というお父さまがいらっしゃいました。ところが、娘さんやお孫さんに個別にお話を伺うと、「実は継ぐつもりはありません」というお気持ちだったんです。もし、そのまま手続きを進めていたら、引き継ぐ立場の方のお気持ちを十分に反映しないまま、事業承継や遺言の内容が決まっていたかもしれません。
――ご家族でしっかり話し合っておくことが大切といえますね。
はい。実際に相続が始まってから、「こんなはずじゃなかった」となるケースは少なくありません。確認しながら準備を進めていれば、結果は違っていたのではないかと思う事例もあります。相続は、ご本人にとって楽しい話題ではありませんが、これまで携わってきた事例をご紹介しながら、事前に備えることの大切さを少しでもお伝えできればと思っています。
――髙山先生が2019年に設立した「女性相続support」について教えてください。
相続支援は税理士だけで完結する仕事ではありません。登記であれば司法書士、紛争になれば弁護士など、さまざまな専門家との連携が必要になります。これまでも案件ごとに信頼できる専門家をご紹介していましたが、お客様にとっては、相談内容ごとに別々の事務所へ足を運ばなければならず、ご負担が大きいと感じていました。そこで、普段から連携している女性士業の方々に声をかけて、ひとつの窓口(ワンストップ)で対応できる体制を整えました。それが「女性相続support」です。
――女性の士業に限定されたのは、どのような理由からでしょうか。
お客様の中には、「同じ女性のほうが相談しやすい」と感じてくださる方もいらっしゃるようです。実際に初めてご自宅へ伺った際、「女性の先生で安心しました」とお声をかけていただくこともあります。また、デリケートなお話や本音もお話しいただきやすく、お客様の細かなお気持ちにも気付きやすいのではないかと感じる場面がありますが、こうした点は女性士業の特徴の一つかもしれません。
――最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。
最近は、「おひとりさま」やお子様がいらっしゃらないお客様からのご相談も増えています。その内容も、施設選びや認知症対策、遺贈寄付など多岐にわたります。お客様が安心して暮らしていけるよう、さまざまな分野の方々とのネットワークをさらに広げ、そうしたご相談にもお応えできるようにしていきたいと思っています。これからもご縁を大切にしながら、お客様一人ひとりに寄り添った相続支援を続けていきたいですね。