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インタビューInterview

ITによる事務所業務の変革を推進 ChatGPT搭載のツールも導入

2023/08/03

StanRiver税理士法人(東京・立川市)
小林 拓真 弁護士・公認会計士・税理士

 米オープンAI(OpenAI)が開発した生成型AI「Chat(チャット)GPT」。昨年11月に一般公開されて以来、全世界で利用者が急増している。こうした中、東京・立川市で開業80年の歴史を持つStanRiver税理士法人はITを活用した事務所業務の変革を進めており、今年6月にはチャットGPTを搭載した新しいツールを導入した。これまでの取組みについて代表社員の小林拓真弁護士・公認会計士・税理士に話を聞いた。


――チャットGPTを早くから事務所でご利用されていたそうですね。
 私たちの事務所では、行動指針のひとつとして「新しいことに常にチャレンジする」ことを掲げており、業務の効率化などに繋がりそうな新しいツールがあれば、これまでも積極的に取り入れてきました。チャットGPTについても、昨年秋に一般公開された頃から注目していましたので、有料版を事務所に導入し、職員全員で性能などを確認しながら、どのように業務に落とし込むことができるか検討を重ねてきました。

――実際に使ってみていかがでしたか。
 チャットGPTの最新版は、性能が各段に向上しており、無料版と比べて有料版は回答の精度もかなり高いです。しかし、情報の正確性という点では、まだまだ不十分なところがあり、現時点では事務所業務において利用できるレベルには達していないと感じました。ただ、チャットGPTについては情報の流出というリスクを懸念していたので、事務所の職員たちが興味本位でチャットGPTを始める前に、お客様の情報は匿名でも登録しないなど、チャットGPTを利用する際のルールを全員でいち早く共有できたのは良かったですね。

――確かに、チャットGPTについては情報漏洩のリスクが指摘されていますね。
 個人の判断に任せておくと、本人に悪気はなくても、予期せぬところでエラーが起きることも考えられます。チャットGPTのように新しくて便利なものは、使い方によっては情報流出などの副作用が起きますので、そこは十分注意しながら取り組んでいます。仮に、お客様の財務情報などが流出してしまえば、事務所が受けるダメージは計り知れません。「ITの活用」と「情報の管理」は、私たちにとって同じくらいに大事なことだと位置付けています。

――今回、チャットGPTを搭載したツールを導入されたそうですが、その経緯を教えてください。
 ここ数年、お客様や求職者からWebサイトを通じてお問い合わせをいただくことが増えてきました。そのため、Webサイトにてお知らせする情報の内容や、情報を掲載する場所の重要性を感じていたところ、私たちの関与先であるSELF株式会社が、チャットGPTと連携した「SELFBOT」という自動学習型チャットボットサービスをリリースしたことを知りました。サービスの説明を聞いたところ、私たちがお伝えしたい情報を正しく、また、分かりやすく伝えてくれるツールだと感じましたので、導入することを決めました。

――そのツールは情報流出の不安などはないのでしょうか。
 質問への回答は、事務所のWebサイトで公開されている情報の範囲内でお伝えしていますので、それ以外の情報が表に出ることはありません。とはいえ、現時点ではまだ情報が少なく、質問にお答えできないこともありますので、多く寄せられる質問をチェックして、それらの回答に繋がる情報を随時補充しています。例えば、「税理士法人の名前の由来を教えてください」という質問は、当初、Webサイトに情報がなくてお答えできませんでしたが、今はちゃんと回答が表示されます。また、事務所の雰囲気など、求職者からの質問と思われる内容も多く寄せられていますので、そうした質問に対する情報も増やしています。今後、情報をどんどん蓄積していくことで、より有益な対話が実現できると考えています。

――税務に関する質問などもありますか。
 個別の税務相談などもいくつかありますが、そうした質問には対応していません。事務所のことを正しく知ってもらうための情報発信に特化しています。というのも、最近はチャットGPTを使って情報収集する方が増えていますが、チャットGPTに「StanRiver税理士法人について教えて」と指示すると、誤った情報が次々と表示されます。今後、情報の正確性というのは、受取る側のリテラシーだけでなく、発信する側においてもしっかり管理することが大事になってくると思いますので、事務所のWebサイトを通じて、私どもに関する正しい情報をしっかり発信していきます。

――StanRiver税理士法人は開業80年という歴史がある一方で、新しいものを次々と取り入れていく姿勢はすごいですね。
 どのようなビジネスでも、時代の変化に対応することができなければ、生き残っていくのは難しいでしょう。特に、人間は年を取ってくると変化することに対して攻撃する人や、目を逸らす人も少なくありません。私たちの事務所にも年配の職員がいますが、事務所にとってメリットが期待できると思えば、新しいツールをどんどん取り入れて、時にはこれまでのやり方をガラッと変えることもあります。

――職員から抵抗はありませんか。
 まったくないわけではありません。例えば、Teamsのチャットを導入する時も、「そんなに大きな事務所じゃないんだから、近くに行って声をかければいいのでは」といった声もありました。ですが、実際に導入して使ってみると、すべての職員にその便利さを分かってもらえました。便利であることを知ってしまえば、元に戻ることはできません。そうしたことを積み重ねてきたことで、職員たちも次第に『変化』に対して『期待』を感じるようになりました。ですから、新しいものを取り入れる文化はしっかり根付いてきていると思います。

――今後、ITがさらに進化すれば、税理士業務も変わってきそうですね。
5年後、10年後に税理士の仕事がどのように変わっているか、私自身も予測がつきません。大きく変わっているかもしれないし、それほど変わっていないかもしれません。ただ、様々なことが機械化されても、最終的な人の意思決定というのは、これからも変わらず残っていくと考えます。最終的な意思決定をする人というのは、まさに経営者や事業主です。だからこそ、今のうちから経営者や事業主のお客様に対してもう一歩踏み込んで、何を望んでいるのか、何を求めているのか、プロダクトアウトではなくマーケットインのサービスをご提供するように職員たちに伝えています。

――経営者や事業主と深く関わっていくことが大切というわけですね。
 そのためにも、職員には日頃から勉強して知識を身につけ、自分自身を高めるように指導しています。近い将来、チャットGPTを活用すれば、正確な情報が簡単に入手できるようになると思います。それ以上に優れたツールが出てくるかもしれません。ですが、どれだけ便利になっても、それはあくまで補助的なツールに過ぎません。お客様から安心して仕事を任せていただけるように、これからも職員全員で自己研鑽に努め、プロフェッショナルとしての成長を目指します。

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