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インタビューInterview

お客様の様々なニーズに応えるため グループ化により守備範囲を広げる

2024/01/23

ストラーダ税理士法人(東京・中央区)
代表社員 山田 直輝 公認会計士・税理士

 幼少期から病気を患い、高校時代は勉強よりも療養に多くの時間を費やしてきた山田直輝公認会計士・税理士。そのハンデを乗り越え、現在は税理士法人の代表社員として活躍するほか、関与先の様々なニーズに応えるため、社会保険労務士法人や行政書士法人などを立ち上げてグループ化による事業を展開している。

――若い頃は病気に悩まされたとお聞きしました。

 幼少期からアトピー性皮膚炎を患わっていて、高校生の時には生活に支障が生じるほど悪化し、勉強よりも療養に多くの時間を費やしていました。最終的には通信制高校に転校することになり、学校生活を楽しんでいる同級生たちをうらやましく思いましたが、負けず嫌いの性格もあって、自分の人生、悔いのないように生きようと強く思うようになりました。その後、症状も少しずつ良くなってきたので大学受験に挑戦し、高校時代から興味があった経営を学ぶために1年浪人して中央大学商学部に入学しました。

――なぜ、経営に興味を持たれたのでしょうか。

 祖父が中小企業診断士で、父親が上場企業の経理部長をしていて、その影響が大きいですね。ただ、経営を学ぶために入学したものの、最初の2年間は高校時代にできなかった学生生活を謳歌して終わりました。大学3年生になり、さすがに進路を考えるようになって父親に相談したところ、公認会計士の仕事について教えてくれて、とても魅力を感じました。難しい資格なのは分かっていましたが、やらずに後悔するなら挑戦してみようと思い、それから1年間、がむしゃらに勉強しました。しかし、結果は不合格で、公認会計士の道を諦めて就職活動を始めることにしました。

――受験はもうやめようと思ったわけですね。

 1年間、朝から晩まで勉強してきたので、どこか燃え尽きた感じがあったのかもしれません。それでもしばらくすると、諦めきれない思いがふつふつと沸き上がり、もう1年だけ頑張ってみることにしました。ただ、これまでやってきた勉強方法を繰り返してもダメなのは分かっていたので、自分ができないところを客観的に分析し、その欠点を補っていく勉強方法に変えていった結果、2年目で合格することができました。合格したのは2008年のリーマン・ショックの翌年で、就職氷河期という非常に厳しい状況でしたが、何とか監査法人にも勤めることができました。

――独立を意識するようになったのはいつ頃ですか。

 もともと20代前半の頃から経営をしてみたいという独立意欲があり、公認会計士を目指したのも、独立する際に武器になると思ったからです。ところが、監査法人で働いていると、毎日がとても充実していて、そこそこ暮らしていける年収もあり、忙しく過ぎていく日々の中で独立という目標をしばらく忘れていました。しかし、20代後半になって自分がどうして会計士になったのかをふと振り返った時、独立するためだということを思い出し、それから本気で独立を考えるようになりました。

―― 独立することに不安はありませんでしたか。

 独立すれば、それまで築き上げてきた地位を失い、収入もゼロになりますので不安はありました。しかし、高校時代に病気の治療に専念していた頃は、ずっと暗闇の中にいるような感じだったので、たとえ独立して失敗したとしても、あの暗闇に戻るよりはマシだ、悔いのないように生きるんだという思いが背中を押してくれましたね。

――独立後、どのように関与先を増やしていきましたか。

 異業種交流会に参加して出会った方々に営業しましたが、まったくダメで、顧問先ゼロの状態が3カ月続きました。このまま同じ考え方に基づいて行動していたら、同じ結果になる。会計士試験を受験して不合格になった際に、勉強方法を変えたように、自分のことを客観的に見つめ直し、考え方を変えなければいけないと思い、それからはお客様を取りに行くのではなく、お客様を紹介してもらえる存在になることを目指しました。例えば、税務とは関係ない相談を受けた時でも、親身になってできる限りの対応をする。弁護士を探している人がいたら、私が知っている方を紹介してあげる。そうやって周りの方に喜んでもらえる自分の『価値』を積極的に提供するようになってから、様々な相談を受けるようになりました。そして、その価値を受け取った方が、知り合いから税金の相談を受けたり、「良い税理士を知りませんか?」と聞かれた時も、私に声をかけてくれるようになり、お客様が少しずつ増えていきました。

――困ったことが起きた時、頭に思い浮かべてもらえる存在になったわけですね。

 そうですね。今でもそのスタイルは変わらず、お客様から税務以外の相談を受けても断らないことをモットーとしています。例えば、お客様から登記に関する相談を受けた時、司法書士の業務だからといって断るとします。しかし、一般の方にとっては登記申請__も税務申告も同じような感じで、専門家の業務範囲なんて分からないという方もたくさんいます。もちろん、登記業務はできませんので、知り合いの司法書士の先生をご紹介いたします。そうなると、お客様には「私に相談したけど断られた」という記憶だけがインプットされ、私に相談するのはもうやめようと思われるかもしれません。ですから、お客様からの相談にはできる限りお応えできるように、税理士法人のほかに社会保険労務士法人や行政書士法人、コンサルティング会社などを立ち上げてグループ化することで守備範囲を広げています。それでも対応できないものは外部の専門家を紹介しますが、いずれにしてもお客様に「できません」とは言わないように心がけています。

―― 職員に対して日頃からアドバイスしていることはありますか。

 私たちの仕事は、社長の意向をしっかり把握して、それに対する的確な回答を出すことです。そのため、職員には「聞く能力」や「質問能力」を身につけるようにアドバイスしています。また、社長は命がけで事業を行っていますので、こちらも本気でぶつかっていかないと、信頼を得ることはできません。特に、職員本人がしっかり業務をこなしていると思っていても、お客様は不満を感じているかもしれません。そこで、お客様の決算が終わった後にアンケートを送付し、私たちの仕事を評価してもらっています。ご指摘を受けたところは全員で共有し、さらに良いサービスを提供できるように改善策を検討します。お客様の評価は事務所にとって貴重なご意見であり、顧客満足度を高める上でも大きな効果があります。

――今後の展望についてお聞かせください。

 ストラーダとは、イタリア語で「道」という意味があります。お客様が歩む長い道をともに歩み続けられるような税理士法人にしたいという想いを込めてストラーダ税理士法人と名付けました。ただ、その道の過程で、お客様のニーズも時代の変化とともに変わっていきます。カメレオンは場所によって色を変えますが、私たちもカメレオンのようにお客様のニーズの変化に合わせて色を変えていくことができれば、いつの時代でもお客様を満足させることができ、そして、この仕事をずっと続けていくことができるはずです。そのためにも、昨日より今日、昨年より今年と、グループ全体でこれからも着実に成長していきたいと思います。

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