税理士の必携アイテム 京都税協が発行する『税務便覧』の魅力
2025/11/17
森 敏行 理事長(中央) 片野 晏弘 税理士(右) 竹村 仁志 税理士(左)

京都税理士協同組合(京都税協)が平成3年に初版を発刊して以来、30年以上にわたり確定申告や相談業務の現場で活用されている「税務便覧」。最新の税制改正に対応し、その使い勝手の良さから“税理士の必携アイテム”として高い評価を得ています。今回は、出版委員会委員長を務め、税務便覧の普及に尽力された森敏行理事長、創刊に携わった片野晏弘税理士、そして現出版委員長の竹村仁志税理士にお集まりいただき、税務便覧が誕生した経緯や制作の舞台裏について語っていただきました。
――税務便覧がどのように始まったのか、その経緯をお聞かせください。
片野:もともと下京支部の吉岡先生が独自に税額表を作られていましたが、昭和63年に制作をやめられました。非常に便利なものだったので、「ぜひ引き継ごう」という声が上がり、京都税協で制作することになりました。私が担当を任されましたが、一人では到底できませんので、税理士試験を一緒に勉強していた知見憲先生と村山佳也先生に声をかけ、さらに各支部の先生方の協力を得て、「税額表作成小委員会」を発足。平成3年に税務便覧の初版が完成しました。初めての試みで、とにかく苦労したことを覚えています。その後は「税務便覧制作委員会」、そして現在の「出版委員会」へと引き継がれています。
――税務便覧の特徴を教えてください。
森:確定申告業務に必要な事項をコンパクトにまとめている点が最大の特徴です。確認したい内容をすぐに探せるよう見開き型で編集され、さらに落ち着いたアースカラーを採用するなど、見やすさにも工夫を凝らしています。所得税・贈与税・消費税・住民税・事業税などを幅広くカバーし、お客様からの相談にも即座に対応できる、まさに必携の一冊です。もちろん、最新の税制改正にも対応しています。
片野:発刊当初はB 5判でしたが、現在はA 4判になっています。紙質も改良され、コーティングにより耐久性を高めたことで、鞄に入れても折れにくく、どこでもスッと取り出せるようになり、使い勝手も良くなったと思います。
――制作にあたって大変なことはありますか。
森:紙面のスペースが限られているため、いかに要点を絞り、スリムにまとめるかが常に課題です。条文が増えてページを追加する場合は、表裏の2ページ分を埋めなければならず、そのレイアウト調整にはとても苦労しました。例えば、消費税もかつては1ページで収まっていましたが、インボイス制度の導入によってページ数が増えました。
片野:私の時代は、便覧の文字数に合わせた専用の原稿用紙を印刷会社に作ってもらいましたね。1行で収まるのか、2行必要なのかがすぐに分かり、調整しやすかったのを覚えています。
――出版委員会はどのようなメンバーで構成されているのでしょうか。
竹村:京都府下には13支部ありますが、委員会の開催頻度が高いため、京都市内と宇治の8支部から選出された12名で委員会が構成され、3名1チームとする4チームで構成されています。毎年1名ずつ新しいメンバーが入り、3年で卒業となります。チームごとに担当ページを割り振っていますが、法改正によって新しい条文のページを制作するチームもあれば、改正が少なくレイアウト調整が中心のチームもあります。そのため、後半になると作業を終えて雑談しているチームの横で、別のチームが税務六法を片手に苦闘している光景もよく見られます。編集作業は6月末から9月前半にかけて、毎週1回、3~4時間ほど行います。初稿が完成した際には全ページを読み合わせるため、午後1時から夜8時過ぎまでかかることもあります。現在は、日本税務会計学会の学会長をお務めの宮森俊樹先生に監修をお願いしており、その監修を経て毎年11月に便覧が完成します。
――編集作業は体力勝負のところもありますね。
竹村:出版委員会は若手の税理士が中心となって活動していますので、皆さんに大いに力を発揮してもらっています。出版委員会を通じて横の繋がりができるほか、自分自身のスキルアップにもなりますので、3年間の活動は非常に充実したものになると思います。
――大きな改正があった年は、制作に時間がかかりそうですね。
森:住宅関連の税額控除が導入された時は、紙面が大幅に増えました。それだけに多くのページを割くのは悩ましいところですが、必要な情報はやはり網羅しなければなりません。新しい条文は次々と追加される一方で、古い条文が消えるわけではありませんので、可能な限りスリムにまとめていますが、必要な情報は年々増えています。
――便覧が完成した後は、やはり達成感がありますか。
片野:もちろん達成感はありますが、完成後に問い合わせの電話などがあると、「内容に誤りがあったのではないか」とドキっとします。何度も校正していますので問題はないのですが、それでも発刊後の問い合わせは緊張しますね。
――税務便覧はどのように販売されているのでしょうか。
竹村:税務便覧の制作は出版委員会で行っていますが、販売については事業委員会が行っています。販売先としては、各地の税理士協同組合からご注文をいただいているほか、提携企業や市役所からも毎年ご注文をいただいています。京都税協の事務局に直接お申込みいただくケースもあります。
森:日税グループにも継続してご購入いただいており、ありがとうございます。ちなみに、税務便覧は国立国会図書館にも収蔵されており、公的にも価値ある資料として認められているのは、大変ありがたいことだと感じています。
――東日本大震災の後、特別ページを作られたそうですね。
森:2011年の東日本大震災を受けて「震災特例法」が制定されましたので、その内容を1枚にまとめ、税務便覧に差し込んで東北税理士協同組合に約2500部を寄贈しました。その後も3年間にわたり寄贈を続けました。
――最後にメッセージをお願いします。
森:税務便覧は、税理士の先生方だけでなく、事務所職員の方々にもぜひ活用していただきたいですね。私自身も税理士資格を取得する前から税務便覧を鞄に入れて、お客様のところを訪問していました。デジタル化の時代ですが、お客様の前でスマホやパソコンを操作して調べるより、鞄から税務便覧をサッと取り出して説明するほうが、専門家としての説得力と知的な印象を与えることができると思います。
片野:伝統ある京都税協のオリジナル商品として、何十年も発刊が続いているのは本当に素晴らしいことです。税理士事務所はもちろん、関与先企業の経理担当者にとっても参考になる一冊ですので、多くの方々にご活用いただければ嬉しいですね。
竹村:特に、今年は扶養控除の要件などが改正されています。年末調整や確定申告の際に税務便覧をチェックリストとしてお役立ていただければと思います。
税務便覧のお問合わせは京都税理士協同組合まで! TEL:075-222-2311