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税務の勘所Vital Point of Tax

「業務関連性が認められない」 医師の高額接待に待った!

2022/01/31

 税務調査のターゲットとして昔からよく知られているのが『接待交際費』だ。所得税であれば接待交際費のうち、主たる部分が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要で、必要な部分を明らかに区分できる金額について必要経費と認められる。単なる遊興費ではないことをきちんと説明できなければ、必要経費として申告しても、後々の税務調査で否認の憂き目にあうことになる。

 最近も個人事業主の医者が一晩10万円超、3年間で1千万円を超える金額を夜の店における接待やお菓子代などに使っていて、それを必要経費として申告したところ、税務署に認められなかった事例がある。

 国税不服審判所の裁決書(令和3年4月20日付)によると、問題になったのは主に、医師が医療法人設立を目指すとともに、分院長となる人材のスカウトのために支出した費用等(平成27年分からの3年間で1千万円超)で、税務署の調査により否認されたものだ。審判所は、次のとおり事実関係を認定した。

・医師サイドが作成した総勘定元帳には、接待の相手方等につき、記載がされていた。
・医院の開設者が医師の場合、医療法の規定により、医院の開設者と管理者は原則として同一人でなければならず、管理者は原則として他の医院の管理を兼務することはできない(中略)医院の開設者が医療法人の場合、本院とは別の管理医師を定めることにより、分院を開設することは可能であること。
・しかし医師である請求人は、令和2年10月7日の時点で、医院の分院長候補となる医師を採用しておらず、医療法人も設立していなかったこと。

 また審判所は、審理で浮かび上がってきた次のような事実を指摘している。

・接待の内容につき、総勘定元帳には記載がなく、経費明細書に、主に、分院の相談や分院打合せといった記載があるのみであり、その具体的な内容は明らかではないこと。
・医療法人設立の準備が具体的に行われていたことをうかがわせる客観的な証拠はないこと。

 こうしたことから審判所は、医師が主張する接待交際費について「客観的にみて、請求人の業務と直接関連し、かつ、業務の遂行上必要な支出であるとは認められない」と判断。また、このほかの取引先等との接待交際費約1千万円についても「業務関連性が認められない」として税務署の処分を支持している。

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