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税務の勘所Vital Point of Tax

収入1000万円以下は故意か? 消費税の納税義務がないように見せかける行為

2025/06/10

 請求人は、電気通信工事業を営む個人事業者で、本件事業に係る請負代金などを本件預金口座において受領していた。

 請求人は、平成24年の1年間の課税期間に係る課税売上高が1000万円を超えるとして、同23年10月に消費税課税事業者届出書を原処分庁に提出。同年12月には消費税簡易課税制度選択届出書を提出した。その後、同25年課税期間に係る基準期間の課税売上高が1000万円以下になったため、同25年3月に消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を原処分庁に提出した。

 請求人は所得税等について同25年分から同30年分まで、および令和3年分は法定申告期限までに、令和元年分および2年分は国税庁長官が定めた期限までに、本件事業に係る各年分の事業所得の総収入金額をいずれも1000万円以下の金額を記載し、原処分庁に提出した。

 請求人は、平成27年課税期間から令和3年課税期間までの消費税等について、いずれも確定申告書を提出しなかった。これに対して原処分庁は、請求人が基準期間の課税売上高を隠蔽し、または仮装したところに基づき申告書を提出しなかったとして消費税等の決定処分および重加算税の賦課決定処分をしたことで争いとなった。

 争点は、請求人は、本件各課税期間の消費税等の課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽・仮装したか否か。納税義務を負わない基準を自らの経験で認識していた請求人は、①請求人による消費税等の認識ある無申告は無申告行為そのものであることや、②何ら根拠のない収入金額および必要経費の額を収支内訳書に記載することは、過少申告行為そのものであって、隠蔽行為または仮装行為に該当せず、特段の行動に当たるとも評価できないと主張した。

 しかし、審判所は、「請求人は平成19年~20年頃から税理士に依頼することなく一人で所得税等の確定申告書と収支内訳書を作成し、平成24年課税期間に係る消費税等の確定申告を行っていたものと推認され、平成25年課税期間については、課税売上高が1000万円以下となったとして本件免税事業者届出書を平成25年3月に原処分庁に提出しており、自己の判断で消費税等の納税に関する各手続を行っていた。これらによれば、請求人は、遅くとも本件免税事業者届出書の提出時点で、課税期間に係る基準期間の売上げが1000万円以下となれば、法律上、消費税等の申告納税義務を負わなくなるという認識を自らの経験によって有していたと認められる」と指摘。

 それを踏まえ審判所は、「請求人は、何ら根拠のない収入金額等を収支内訳書に記載したのではなく、課税期間に係る基準期間の売上げが1000万円以下となれば、消費税等の申告義務を負わないと認識した上で、平成25年以降比較的長期間にわたって、消費税等の申告納税義務を免れることを積極的に意図し、故意に事業所得の総収入金額が1000万円を超えないように所得税等の確定申告書および収支内訳書に過少な収入金額を記載して原処分庁に提出することで、課税標準等の計算の基礎となるべき事実である、基準期間中における課税資産の譲渡等の対価の額を故意に脱漏し、課税期間において消費税法上の免税事業者であることを装い続け、本件の各課税期間の消費税等の確定申告をしなかったのであるから、かかる行為は隠蔽または仮装と評価すべき行為であり、単なる無申告行為や過少申告行為そのものと評価することはできない」として、請求人の主張を退けた。 (令和6年4月23日裁決)

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