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税務の勘所Vital Point of Tax

基準地価 昨年までの上昇基調に急ブレーキ

2020/10/23

 全国2万1507地点を対象に実施された令和2年7月1日時点の1年間の地価動向を表す都道府県地価調査が9月29日に発表された。対象期間半ばの年明けごろからくすぶっていた新型コロナウイルス感染症が世界的に急拡大したのを受けて、国内でも経済や社会に著しい停滞を招いた。政府の出入国規制や緊急事態宣言発令に伴う外出、営業などの自粛要請が出されたことで、昨年までの地価の上昇基調に急ブレーキがかかった。

 全国全用途平均は0.6%下落(前年比1.0ポイント減)、2年続いた上昇傾向から下落に転じた。用途別では、商業地が0.3%下落(同2.0ポイント減)して平成27年以来5年ぶりに下落に転じた。住宅地は0.7%下落(同0.6ポイント減)で、下落幅が拡大した。上昇が続いた工業地も0.2%上昇(同0 .8ポイント減)となり、上昇幅を狭めた。新型コロナウイルス感染症の影響による土地需要の低下、不動産取引の停滞が全国の地価に如実に表れた格好となった。

 各都道府県の地価調査をとりまとめた国土交通省は、令和元年7月1日から令和2年1月1日までの前半については、「交通利便性や住環境の優れた住宅地、オフィス需要の強い商業地、訪問客の増加に伴う店舗やホテルの進出が見込まれる地域を中心に地価の回復傾向が継続していたとみられる」としている。しかし、令和2年1月1日以降の後半に入ってからは、「新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まり、総じて上昇幅の縮小、上昇から下落への転化となったとみられる」と総括している。

全国の「下落」の地点数を用途別の割合で見ると、住宅地は同11.2ポイント増の63.0%、商業地は同15.0ポイント増の55.5%と共に下落地点の増加が顕著だった。特にインバウンド需要に支えられてきた反動と、コロナ禍による営業や外出の自粛、テレワークの拡大などによるオフィス需要の変化などがもたらされた結果、商業地でより強くコロナショックが顕在化したと見られる。

コロナショックを受けるも不動産取引は少しずつ回復

 今回の調査結果に対して不動産業界のトップからは、経済の先行き不透明感が高まっているとして今後の動向を注視するとの声が多く上がっている。また通常では今年1月1日時点の地価公示を基にして来年度に固定資産税の評価替えが行われるのにあたり、「実勢を十分に反映しない評価が3年間にわたり高止まりし、広範な納税者に大きな負担を強いることとなる」との懸念も聞かれた。

 こうした声が高まる一方で、「緊急事態宣言の影響で4、5月の不動産取引件数は大きく落ち込んだが、足元では前年水準まで回復してきている」、「潜在需要の顕在化、価値観やニーズの多様化を受けて、不動産流通市場では新築、中古共に足元では好調に推移している。テレワークの進展により「住む/働く」の境が薄まり、『住むだけ』『働くだけ』ではない新しい『住まい方』『働き方』のニーズが生まれている」、「多様化するニーズに応え、新たなワークスタイルとライフスタイルを提案、提供すると共に、リアルとデジタルが一体となったまちづくりを推進していく」といったアフターコロナを見据えた前向きなコメントも多く聞かれた。

 近年、続いていた地価上昇は、旺盛な実需に支えられてきた不動産市場の堅調さを反映していた。地域や用途によってコロナ禍の影響の度合いに温度差はあるものの、コロナ禍の混乱が収束に向うようになれば、「実需に支えられた不動産市場」も再び回復基調に戻っていくものと思われる。

 なお、今回調査の基準地数は2万1519地点で、うち福島第一原子力発電所の事故の影響により12地点は調査休止となっている。

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