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税務の勘所Vital Point of Tax

家族信託契約で相続対策~家族信託で子孫に暦年贈与できるか~

2018/07/10

アドバイザー/遠藤家族信託法律事務所 代表 遠藤 英嗣 弁護士

【家族信託には優遇税制はない】
 最近、家族信託契約で、信託財産から委託者の子や孫に暦年贈与できますかという質問をしばしば受けることがあります。これは、信託で相続対策を考えたいとする税理士からの質問です。家族信託は、いわゆる節税は無理でも、相続対策のために活用されることも少なくないのです。


【家族信託と暦年贈与】
 冒頭の質問の答えは、一通りではありません。要は、信託の仕組みの中でも、経済的合理性のある相続対策を取れるかということです。その一つが、歴年贈与による相続財産の取り崩しです。もちろん、委託者兼受益者であるオーナーの方が、意思能力がしっかりしているのであれば、いったん委託者であるオーナーの方に相続対策資金を給付し、オーナーから子や孫に暦年贈与することは可能で、あとは贈与税の問題だけです。


【信託内給付としての暦年贈与】
 相談が多いのは、委託者本人が認知症になった後も、子や孫に毎年それぞれ300万円を信託財産から暦年贈与したいというものです。なかには、相続対策の一環として、子供や孫十数名に、信託財産から総計数千万円を暦年贈与したいができますかという質問もあります。

 信託は、受益者を護る仕組みであり、したがって受益者になっているか否かによって違います。しかし、先ず言えることは、信託行為に「子や孫に各300万円を毎年帰属者として給付する」と定めた場合ですが、この定め方は信託設定時信託期間に乗じた総額が贈与されたとして一括課税されると考えられています。これは、「毎年、110万円を限度として給付する」と定めた場合も同じです。

【一括課税を避ける信託内給付】
 家族信託契約では、かかる受贈者であるお子さんやお孫さんの十数人のすべてが受益者になっている事例は皆無ですが、ときにはお孫さん2、3名が受益者になっている場合もあります。

 この場合ですと、一括課税のおそれがあり、これを避けるために、私が取り扱う例のほとんどは、主たる受益者(委託者)の扶養を受ける者として登場し、受益権の割合も扶養義務の範囲と限定しています。

【扶養義務の範囲を超えた信託内給付】
 扶養義務の範囲と限定した場合、一人にいくらまで渡せるかという質問がありますが、税理士の方であれば、愚問だということはお判りでしょう。また、この仕組みの中で、相続対策として毎年300万円の贈与が可能かという質問があります。しかし、扶養義務の問題と相続対策は異次元の問題です。しかしながら、その秘訣はあります。家族信託は、その定め方ひとつで、課税が異なりますので、留意が必要です。

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