収益計上は死亡日か?死亡保険金の益金の額の算入時期めぐりバトル
2025/01/17
請求人は、建築・土木工事請負業等の法人。令和3年12月○日に代表取締役A(前代表者)が死亡、同月にBが就任した。 請求人は、保険会社2社との間で、保険契約者を請求人、被保険者を前代表者、死亡保険金の受取人を請求人とする複数の生命保険契約を締結していた。各保険契約に係る約款や特約条項の内容等は、要旨次のとおり。
①支払事由が生じたときは、各保険会社は保険金を支払う。支払事由とは、被保険者の保険期間中の死亡である。
②支払事由が生じたときは、保険金受取人は遅滞なく各保険会社に通知し、速やかに必要書類を提出して保険金を請求する。
③保険金は、上記②の必要書類が各保険会社に到着した日の翌日または翌営業日からその日を含めて5営業日以内に支払うが、保険金を支払うために確認が必要な場合やその確認のために特別な照会や調査が不可欠な場合には保険金の支払期限が延長される。
④上記①の支払事由が生じても、一定の免責事由に該当するときは、各保険会社は保険金を支払わない。
前代表者は令和3年12月に病院で死亡。病院は直接死因を「○○○○」、死因の種類を「病死及び自然死」と診断した。
請求人は、各生命保険契約について、令和4年3月8日付、令和4年5月31日付で、保険会社2社に必要書類を提出して保険金の請求を行い、各生命保険契約について令和4年3月16日付の「お支払のご案内」と題する各書面、また、同年6月6日付の「お支払明細書」と題する書面を受領した。そして、同年3月17日および同年6月8日に、各書面に記載された各金額が請求人名義の銀行口座に入金され、請求人はそれぞれ同日付で、同入金額について保険積立金等を差し引いた金額を雑収入に計上した。
その後、請求人は令和3年12月期の法人税等を法定申告期限までに申告したが、各保険契約に基づく死亡保険金請求権(各請求権)に係る保険金の額(各保険金の額)を益金の額に算入しなかった。
原処分庁は、これに対し、請求人は前代表者の死亡日において各請求権を取得するとともに、当該権利の行使が可能となったことから、各保険金の額は請求人の令和3年12月期の益金の額に算入すべきとして、令和4年12月16日付で法人税等の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をしたことで争いとなった。
主な争点は、各保険金の額は令和3年12月期の益金の額に算入されるか否か。保険会社の調査結果次第では保険金が出なかった可能性も 原処分庁は、前代表者の死因は当該保険契約に係る保険金の支払事由に該当するとともに、免責事由のいずれにも該当しないことからすると、請求人は前代表者の死亡日において、当該保険金に係る保険金請求権の実現可能性を客観的に認識でき、その行使が可能となったといえるから、請求人が受領した死亡保険金(本件保険金)の額は前代表者の死亡日の属する事業年度の益金の額に算入すべきである旨を主張する。
しかしながら、審判所は、「本件保険金は、保険会社の確認調査等の結果次第では支払われないこともあり得たこと、請求人が恣意的に本件保険金の額の収益計上時期を繰り延べようと企図した事実は認められないことを踏まえれば、本件保険金の額を支払通知日の属する事業年度の雑収入に計上した請求人の会計処理は、取引の経済的実態からみて合理的な収益計上の基準に則したものであり、法人税法上も正当なものとして是認すべきと認められる」として、原処分を取り消した。
(令和6年2月26日裁決)