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相続した賃貸物件の賃料の帰属先と遺産分割について

2016/08/22

<質問>
 不動産賃貸業を営んでいた甲が死亡しました。甲は遺言書は作成していません。甲の相続人は配偶者と子供3人(A,B,C)で現在、遺産分割協議中です。甲の相続財産に貸家がありますが、その賃料に係る不動産所得はどのように申告したらよいのでしょうか?

また、相続開始の日から遺産分割協議成立の日までのその貸家の賃料の精算は、どのように行えばよいでしょうか?

 <回答>
1.所得税の取扱い
(1)未分割遺産から生ずる不動産所得の取扱い
 未分割の相続財産は、各相続人の共有状態にあり、民法では、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」(民法898条)とされています。

 ご質問のような未分割遺産(貸家)から生じる賃料債権の帰属については、最高裁判決があります。この判決によれば「遺産は相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」(最高裁平成17年9月8日判決)としています。

 上記の判決を踏まえ、税務上もその相続財産から生ずる所得は、各相続人にその相続分に応じて帰属するものとなり、遺産分割が確定するまでは、たとえ特定の相続人が賃料を管理していたとしても、各相続人がその法定相続分に応じて申告することとなります。ご質問のケースですと、配偶者が2分の1、子A,B,Cは6分の1ずつ収入があったものとして所得税の申告をします。

(2)分割協議が成立した後の不動産所得の取扱い
 分割協議が成立した後は、実際にその相続財産たる貸家を相続した相続人が、それ以降の賃料収入を申告することになります。

 なお、分割協議の成立により、その遺産の相続分に変動があっても、分割協議成立までに生じた賃料債権の所得の帰属に影響を及ぼすものではないため、修正申告及び更正の請求により所得税の調整を行うことはできません。例えば、遺産分割協議により共同相続人のうち子A1人がすべて相続することになったとします。分割協議が成立するまでは、1.に記載の通り、法定相続分通りに申告した場合に、相続しないこととなった配偶者らが更正の請求をしたり、逆にすべて相続することとなった子Aが過少申告だったとして修正申告をしたりすることはできないということになります。(上記(1)(2)については国税庁「タックスアンサー」NO.1376を参考にしました。)

2.未分割遺産から生ずる賃料の精算の必要性
 前述1の最高裁の判決により、遺産は相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当とされました。また、同判決では、遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきであると判示しています。よって、さかのぼって相続人間で、分割協議の結果に従って精算(過不足のやり取り)をするべきものではありません。例えば、遺産分割協議により共同相続人のうち子A1人がすべて相続することになったとします。この場合でも、さかのぼって貸家が未分割であった期間に法定相続分通りに各相続人が取得した賃料を、貸家を相続した子Aに渡す必要はなく、その賃料について各相続人が取得したままであっても、民法上も税務上も問題はありません。

(今回のアドバイザー:税理士法人タクトコンサルティング 飯田美緒税理士 <TACTニュースより>)

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