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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

家屋の一部を更地にして譲渡 居住用財産の譲渡所得の特別控除は?

2016/10/14

 平成21年8月、請求人Aは居住していた家屋の一部(旧家屋の部分)を取り壊して更地とし、残存した家屋の改修工事等を行った。Aは、同年11月に更地をKに譲渡したが、家屋の一部取り壊しと残存家屋の改修工事中も残存家屋に居住していた。

 その後、Aは更地の譲渡に係る譲渡所得について、租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項に規定する特例を適用して平成22年分の確定申告を行った。しかし、原処分庁は、本件特例は適用できないとして、所得税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことで争いが起きた。

 措置法第35条第1項は、個人が居住している家屋とともにその敷地の土地を譲渡した場合、譲渡所得について特別控除を認めている。これは、居住用財産の譲渡で住居を失った場合、新たな住居を取得しなければならないのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、担税力も高くない例が多いことなどを考慮したものだ。土地を更地として譲渡する目的で家屋を取り壊し、土地のみを譲渡する場合も本件特例の要件に該当する。家屋の一部を取り壊し、その取り壊し部分の敷地を譲渡した場合には、家屋の残存部分がその物理的形状等に照らし居住の用に供し得なくなったということができれば、本件特例を適用し得ると解されている。

人が居住できる建物の構造を備えていたか?

 
争点は、Aが家屋の一部を取り壊した後、残存家屋がその物理的形状に照らし、居住の用に供し得なくなかったか否か。Aは、残存家屋について「改修工事をしなければ、機能的にみて居住可能な独立した家屋であるとはいえなかった」、「各工事期間中は、居住し難い相当な不便を我慢しながら居住していた」、「家族4人の居住空間が十分に確保できず、長女は残存家屋から転居した」などとして、「残存家屋は、その物理的形状に照らし、居住の用に供し得なくなったものである」と主張。

 一方、原処分庁は、「残存家屋の1階には店舗、ダイニングキッチンおよびトイレが、また、2階には居室3室、風呂およびトイレが存しており、その物理的形状に照らし、居住の用に供し得なくなったとまではいえない」と指摘した。

 これに対して審判所は、「本件一部取り壊しによっても、残存家屋の旧家屋との断面の壁は内壁を備えており、また、残存家屋の屋根のふき替えはその一部にとどまっていた。そのため、一部取り壊しおよび改修工事の各工事期間中、残存家屋の屋根および壁にブルーシートを張るなどといった対策を施して風雨の侵入を防ぐことができたのであって、残存家屋は、客観的に見て工事期間中も人が居住することが可能な建物としての構造を備えていた」と判断。

 また、「改修工事がされたことや、実際に居住していた者が不便を感じたことによって(居住の用に供し得なくなったとはいえないという)結論を異にするものではない」、「家族4人が居住できる間取りと広さは確保されており、請求人の長女が転居をしたことが結論を左右することもない」として、「住居を失ったのと同視することはできず、本件特例を適用することはできない」との裁決を下した。

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