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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

外貨建て円払い取引か? 請求人に交付した税額計算書に外国通貨の記載が…

2025/07/23

 請求人は、台湾に所在する外国法人F社との間で、令和元年8月27日および令和3年9月13日に雇用契約を締結し、F社の顧問を務めた。
 F社は、請求人に対して支給する給与(本件国外給与)を、請求人名義の普通預金口座に振り込んだ。

 F社は請求人に対し、令和元年分ないし令和3年分(本件各年分)の台湾税額計算書と所得明細を交付した。台湾税額計算書には、新台湾ドルで総支給額および源泉徴収された税額などが記載されていた。また、所得明細には、日本円で総支給額、台湾の法令により課される所得税(台湾所得税)、台湾の社会保険料ならびに総支給額から台湾所得税および台湾の社会保険料等を差し引いた実際の送金額(差引支給額)などが記載されていた。
 請求人は、各年分の所得税等について、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用して、各確定申告書を作成し、原処分庁に対して法定申告期限内に提出した。
 原処分庁は、調査担当職員の調査に基づき、令和5年7月7日付で、各年分の所得税等の各更正処分ならびに令和2年分および令和3年分の過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
 請求人は、本件各更正処分および本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和5年10月に審査請求をした。
 主な争点は、本件国外給与に係る給与所得の収入金額は、本件総支給額を円換算すべきか否か。

雇用契約の定めにより日本円で給与を送金した

 請求人は、「本件国外給与の支給については、雇用契約において、F社が本件国外給与を日本円で支払うことを合意している。そして、所得明細においても本件国外給与が日本円で算定され、支給日に請求人口座に日本円で送金されている。したがって、本件国外給与に係る給与所得の収入金額は、日本円である所得明細の総支給額となるから、円換算を行う必要はない」と主張。
 一方、原処分庁は、「本件国外給与の支給については、台湾税額計算書に総支給額が新台湾ドルで記載されており、台湾税額計算書に記載された支給日に国外給与が請求人口座に日本円で入金されていることから、いわゆる外貨建て円払い取引に該当する」とした。
 これに対して審判所は、「原処分庁は、F社が請求人に交付した税額計算書には、請求人の本件国外給与が外国通貨で記載されており、本件国外給与が請求人の口座に日本円で入金されていることから、いわゆる外貨建て円払い取引に該当するとして、本件国外給与に係る給与所得の収入金額は、所得税基本通達57の3-2《外貨建取引の円換算》の注5の定めに基づき、外貨建取引に準じた方法で本件計算書の総支給額を円換算する必要がある旨主張する。しかしながら、F社が請求人に交付した税額計算書は、F社が請求人から源泉徴収した税金を外国の国税当局に納付する際に使用する書類であって、F社は、請求人との雇用契約の定めに従い、請求人に本件国外給与を日本円で支払うため、日本円で算定した所得明細を請求人の給与明細として作成し、所得明細に基づき、本件国外給与を請求人の口座に日本円で送金していることから、本件国外給与の支給は外貨建て円払い取引には該当せず、本件国外給与の各月の収入金額は、日本円で算定された所得明細に記載の総支給額であることから、本件国外給与に係る給与所得の収入金額を算定するに当たり、円換算する必要はない」と判断、処分の一部を取り消した。
 (令和6年7月3日裁決)

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