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教えて熊王先生 消費税の落とし穴はココだ!税理士 熊王征秀

販売奨励金と売上割引 マイナス項目としての取扱い

2016/08/04

Q.雑貨品の卸売業を営む当社では、取引先に金銭で支払った販売奨励金は販売促進費として販売管理費に計上しています。また、売上割引は営業外費用として処理しています。消費税の計算においては、販売奨励金は課税仕入れ、売上割引は支払利息(非課税)として処理することになるのでしょうか。

A.
1.販売奨励金の取扱い
 課税売上げにつき、返品や値引が発生した場合には、課税標準額は返品や値引高を控除する前の総売上高ベースで計算し、返品や値引高に対する消費税は、申告書の④欄で課税標準額に対する消費税額から別枠で控除します(消法38①)。

 「売上げに係る対価の返還等」に該当し、税額控除ができるのは、課税売上げに対する返品や値引だけでなく、金銭による割戻金、販売奨励金も対象となります(消基通14-1-2)。したがって、取引先に支払った販売奨励金は課税仕入れではなく、課税売上高のマイナス項目として税額控除の対象にするとともに、課税売上割合の計算上、課税売上高から控除することとなります。

 また、課税仕入れにつき、返品や値引が発生した場合には、その返品や値引高に対する消費税は課税仕入れ等の税額からマイナスすることとされています(消法32)。

 税額調整の対象となるのは返品や値引だけでなく、金銭による割戻金や販売奨励金も対象となります(消基通12-1-2)。したがって、取引先から収受した販売奨励金は課税売上げではなく、課税仕入高のマイナス項目として処理することとなりますので注意が必要です。

 実務上、消費税の課税区分にあたっては、とかく勘定科目による判断に偏りがちになってしまいます。

 販売促進費は、大方が課税仕入れになるものと思われますが、ご質問の事例のように、売上高のマイナス項目として処理することもあります。また、購入した課税物品を取引先に贈呈し、販売促進費として処理した場合には、金銭による販売奨励金ではないので「売上げに係る対価の返還等」には該当せず、対価性のない取引として消費税の課税の対象とはなりません。また、個別対応方式の適用に当たっては、課税物品の購入費は課税売上対応分に区分することができます。

2.売上割引の取扱い
 売掛金を期日前に回収した場合に取引先に支払う売上割引は、会計上は支払利息に準ずるものとして営業外費用に計上することとされています。しかし、消費税では、売上割引は支払利息ではなく、売上高のマイナス項目として取扱うこととなりますので注意が必要です(消基通14-1-4)。

 また、買掛金を期日前に支払った場合に取引先から収受する仕入割引は、会計上は受取利息に準ずるものとして営業外収益に計上することとされているのに対し、消費税では仕入高のマイナス項目として扱うこととなります(消基通12-1-4)。

 仕入割引は受取利息ではありませんので非課税売上高とはなりません。したがって、課税売上割合の分母に加算する必要もないわけです。

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