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教えて熊王先生 消費税の落とし穴はココだ!税理士 熊王征秀

少額特例の適用 新設法人はどうなる?

2025/10/20

Q.新設の法人は基準期間がないことから少額特例は適用できないことになるのでしょうか。また、少額特例の適用を受ける場合でも、領収証や請求書などの保存は必要となりますか?

A.少額特例とは?
 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000 万円以下である事業者が国内において行う課税仕入れについては、その課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められています。

 この制度は、固定資産の譲渡など、臨時の課税売上高が発生したことにより一時的に基準期間における課税売上高が増加した場合に備え、特定期間における課税売上高により判定することを認めたものと思われます。

 よって、基準期間における課税売上高が1億円を超えていても、特定期間中の課税売上高が5,000 万円以下であれば適用することができます。ただし、特定期間における課税売上高に代えて給与等の支払額を用いることはできませんので注意が必要です。

判定金額と取引単位
 「課税仕入れに係る支払対価の額」とは税込みの課税仕入高のことなので、支払金額に100 / 110(100 / 108)を乗じた金額で比較することはできません。また、1万円と比較する課税仕入高(税込)は、一商品ごとの仕入金額ではなく、取引ごとに発行される納品書や請求書の単位で判定することとされていますので、月まとめ請求書のように、複数の取引をまとめた単位により判定することとはならないことに注意してください(インボイスQ&A問112)。

適用期間
 少額特例は課税期間単位ではなく、令和5年10 月1日から令和11 年9月30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて適用することができます。よって、個人事業者の令和11 年の取引であれば、1月1日から9月30 日までの間は少額特例が適用できるのに対し、10 月1日以降の取引については、たとえ1万円未満の経費でも原則としてインボイスの保存が必要となります。

新設の法人はどうなる?
 新設された法人は、設立事業年度とその翌事業年度の基準期間がありません。すなわち、基準期間における課税売上高が1億円以下(ゼロ)となるわけですから、たとえ特定期間中の課税売上高が5,000 万円を超える場合であっても、少額特例の適用を受けることができます(インボイスQ&A問111(注)1)。

領収証等の保存義務
 令和5年10 月1日から令和11 年9月30 日までの間は、免税事業者や消費者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の80 %(50 %)を控除する経過措置が手当てされています。この経過措置を適用する場合には、仕入先の名称や日付、取引内容や仕入金額などが記載された区分記載請求書等を保存する必要がありますが、少額特例については、領収証や請求書等の保存義務はありません。ただし、所得税や法人税では当然に経費などの支払いを証明する書類などが必要となりますことにご注意ください。

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