剣道連盟にスキあり、税務調査の一本
2021/02/16
日本の剣道人口は170万人といわれています。全国組織として一般財団法人全日本剣道連盟があり、地方組織として各都道府県の剣道連盟があります。地方組織は、公益財団法人、公益社団法人、一般財団法人、一般社団法人、任意団体と実にさまざまです。こうした中央と地方の組織のあり方は、剣道に限らず、どのスポーツ団体でも似通っています。
日本中がコロナ禍の緊急事態宣言によって重苦しい空気に包まれる中、令和3年1月29日に佐賀新聞が報じたのは、佐賀県剣道連盟が1953年の設立以来長年にわたって源泉徴収を行わないできたことや、消費税に関することでこの1月に佐賀税務署の税務調査が入っているという事実でした。
佐賀県剣道連盟は任意団体ですが、任意団体でも税法上は法人とみなされて、給与や報酬を支払うときには所得税等の源泉徴収の義務がありますし、物品販売や受託事業などの収益事業を行う場合には法人税等の税務申告をしなければなりません。また、モノやサービスを提供して対価を得る場合には消費税の課税対象となります。報道によると、佐賀県剣道連盟では内部で源泉徴収をしていないことが問題となり、昨年10月から源泉徴収を始めたそうですが、これは今どき考えられないほどお粗末としかいいようがありません。
さて、一般に剣道連盟の収益源は、昇段審査のための「審査料」と、審査合格後に必要となる「登録料」とされています。佐賀県剣道連盟でも、令和元年度の決算で、受審料770万円、証書料1132万円となっていますが、この証書料というのはおそらく登録料のことでしょう。
剣道などのスポーツは、収益事業の技芸教授業には該当しませんので、この審査料や登録料は、法人税等の課税対象にはなりませんが、だからといって消費税の課税対象にならないと決めつけるのは早計です。消費税の観点からすると、審査料は審査というサービスの対価、登録料は登録というサービスの対価に当たります。一般的な感覚からすると、少し違和感があるかもしれませんが、対価という事実は厳然としてあるわけですから、佐賀県剣道連盟のように、それを正しく把握して申告していなければ、税務調査が入って一本取られるようなことがあっても仕方ありません。