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トラブルは現場で起きている!

財政ひっ迫のバチカン、裁かれる聖職者たち

2021/11/16

 コロナ禍の影響でロックダウンが行われたイタリアでは、観光が数か月にわたり禁止となり、その影響でローマ市内にあるバチカンを訪れる旅行者も大きく減少したのに加えて、世界中のカトリック教徒からの寄附金もすっかり乏しくなったことから、キリスト教カトリックの総本山であるバチカンの財政がひっ迫していると伝えられています。そのため、枢機卿全員の給与カットや外国訪問の削減など、緊縮財政に追い込まれているそうです。枢機卿は、カトリック教会におけるローマ教皇の最高顧問で、世界に226人いるとされています。

 その枢機卿の一人であるベッチウ枢機卿ら10人が横領などによりバチカンに甚大な経済的損失を与えたとして、2021年7月27日、バチカンの裁判所で初公判が開かれました。

 バチカンの資金管理をめぐっては、これまでも宗教事業協会、通称「バチカン銀行」が政治家やマフィアの借名口座として不正蓄財に使われたり、マネーロンダリングの温床になっていると問題になったりしていました。1978年にローマ教皇に就任したヨハネ・パウロ1世が、バチカン銀行の不透明な財政についての改革に乗り出し、当時総裁を務めていたマルチンスク大司教の更迭を決定していたのですが、在位わずか33日目に自室で遺体となっているのが発見されました。1982年には、マルチンスク大司教の下で起こったマネーロンダリングと多額の使途不明金の影響を受け、イタリアの取引銀行が破綻したのですが、この事件では複数の関係者が暗殺され、映画『ゴッドファーザー PARTⅢ』の題材にもなりました。

 その後も、バチカン銀行を巡る不正は後を絶たず、2021年1月21日には、カロイア元総裁が公金横領とマネーロンダリングの罪で禁固8年11か月の有罪判決を言い渡されています。

 ベッチウ枢機卿は、教会への寄附を管理する国務長官代理を務めていましたが、ロンドンへの不動産投資に関連して、自分の兄弟が運営する会社などに資金を流用するなどして、1,500万ユーロ(約19億円)をバチカンからだまし取ったとして、横領や詐欺、職権乱用などの罪に問われています。

 いやはや、カトリックの総本山にして、なんという乱脈ぶり。聖と俗はコインの表裏の関係にあり、宗教と金は切っても切れない縁なのでしょうか。

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