収入按分が否認されたケース
2017/08/24
マスコミは脱税や申告漏れを報道する側だとばかり思っていたら、大間違い。結構、報道される側に回ることも少なくないのです。全国の新聞やテレビにニュースを配信している共同通信社が、東京国税局から税務調査を受け、2007年3月期までの6年間に61億円の申告漏れを指摘されたとして大きく報道されたのは、2008年5月のことでした。
共同通信社の前身は、1936年に発足した社団法人同盟通信社ですが、これが解散して、新聞や放送などのメディア向けの記事配信を行う社団法人共同通信社と金融・証券市場、商品相場、行政動向などの情報配信を行う株式会社時事通信社が設立されたのは1945年(昭和20年)のことでした。
公益法人である社団法人として設立された共同通信社は、社員として加盟している新聞社やNHKからの加盟費(会費)をもとに取材活動を行い、ニュースを加盟社に配信していました。この配信事業は、本来の公益事業であるとともに、税務上は会費との間に対価的対応関係のない非収益事業であるとされてきました。
この他に、共同通信社は社員でない全国紙や民放などから契約費という名の対価を受け取ってニュースの配信を行っていました。共同通信によると、かつてはすべてが収益事業ではないとして申告していなかったそうですが、1998年3月期から契約費の分を収益事業である請負業に当たるとして税務申告をしていました。申告に当たっては、非収益事業と収益事業の収入比率がおおむね8対2程度だったため、取材費などの経費についても8対2に按分して計上していたものです。
これに対する税務当局の指摘は、経費は収入按分ではなくニュースの配信量など実態に応じて非収益事業と収益事業に区分すべきだというものでした。実際のところ、契約社のための取材は少なく、大半は加盟社向けの取材で得られた情報の二次利用という面が大きかったといわれています。つまり、経費のほとんどは非収益事業のためのもので、収益事業の経費は2割どころか、多く見積もっても1割程度という状態だったのです。これを6年分見直したところ、61億円の差額が生じたそうですが、赤字決算が続いていたため、追徴課税の対象となった課税所得は最終的に1億7千万円で、追徴税額は4600万円に止まりました。
法人税基本通達では、経費の按分基準として資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比などを示しています。この中では、客観性にも優れており入手しやすい基準であることから、収入金額の比を使う場合が多いわけですが、これが必ずしもすべての場合に適用できるわけではないということです。
ちなみに、共同通信社は、その後の公益法人改革で公益法人から一般社団法人に移行しています。