日本相撲協会と公益法人の技術的能力
2018/01/09
何かと話題の多い日本相撲協会が、力士の暴力問題で揺れていますが、日本相撲協会よりも先の平成25年に暴力問題が浮上して組織改革を求められたのが、同じ公益財団法人の全日本柔道連盟だったことはまだ記憶に新しいところだと思います。
全日本柔道連盟は平成25年7月の内閣府からの勧告の中で、「技術的能力に欠けている疑いがある」とされましたが、これは女子日本代表選手の指導に当たり、竹刀で殴打、顔面を平手打ち、髪の毛を鷲づかみにしながら「お前なんか柔道やってなかったら、ただのブタだ」などの暴言を浴びせていたことなどが判明してのことでした。
一般社団法人や一般財団法人が、公益社団法人や公益財団法人であり続けるためには、少なくとも18項目にわたる公益認定基準を満たさなければなりませんが、その中に「公益目的事業を行うための経理的基礎と技術的能力を有すること」というのがあります。経理的基礎は、適正な会計ができる体制が整えられているかどうかを問うものですが、ここにいう技術的能力とは暴力等の不当行為に依存することなく競技者等を適正に育成することを組織的に実施しうる能力をいうとされています。それからすると、日本相撲協会も、「技術的能力に欠けている疑いがある」ということになるかもしれません。
日本相撲協会は財団法人として大正14年に設立されたのが、公益法人改革に合わせて平成26年に公益財団法人に移行したものです。設立のときのことを調べてみると、「当時摂政皇太子であった昭和天皇の台覧のおり下賜された奨励金から摂政宮賜杯(現在の天皇賜杯)をつくったが、興業主に過ぎない団体が菊花紋章の入った優勝杯を使用するわけにはいかず、財団法人設立の許可を受けた。この許可も、そもそも団体の存在に公益性がないことからどうやら難しそうだとみて、あえて年末に申請して強引に許可を得たという裏話が残っている。」という記事が載っていました。
こうした経緯や組織の体質を考えると、日本相撲協会はどう見ても今の公益法人制度にはなじまないし、公益財団法人というお仕着せの制服はいかにも窮屈な気がします。本来であれば、いくつか例もあるように特別の法律を作って、公益法人ではない特別の法人に移行すべきだったのでしょうが、そうならなかったのは、いろいろ不祥事続きの日本相撲協会に手を差し伸べて、あえて火中の栗を拾う政治家や役人が皆無だったということかもしれません。