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第4回 認知症(成年後見)と「資産凍結」(その1)

2018/09/07

 最近、よく、「後見(成年後見)が開始されると、本人の財産は凍結される」という話を聞きます。

 現に、平成30年8月23日付け日本経済新聞1面に、「認知症患者、資産200兆円に」「マネー凍結懸念 対策急務」という大見出しの記事がでました。これを見て、認知症になると、その資産は凍結(使えなくなる)されると即断された人も少なくないかもしれません。

 確かに、認知症にり患し、判断能力が喪失した場合は、金融機関では、その人の預貯金の払戻しはできなくなります。かかる意味では、金融資産が出し入れできず、事実上凍結されたということになるかもしれません。



成年後見制度は、本人の資産を凍結するのか
 「資産の凍結」というと、被相続人の預貯金の凍結を連想されるでしょう。ところで、成年後見制度を利用している家族の人に言われている「資産の凍結」とは、一般には本人やその家族が預貯金の出し入れができなくなるという意味で使われているようです。しかし、成年後見制度のすべての制度において、かかる意味での本人の資産の凍結はありません。詳しくは次回以降に述べますが、成年後見制度には4つの制度(「後見制度」「保佐制度」「補助制度」及び「任意後見制度」)があり、それぞれ制度設計が異なっています。したがって、4つの制度の中には、本人が自由に預貯金を払い戻しできる制度もあるのです。

認知症と預貯金の出し入れ
 
次に認知症ですが、認知症と診断されても、本来、本人の預貯金が出し入れできなくなるということもありません。それは、本人の認知機能が著しく低下し、契約する能力等を欠いている場合の問題です。しかし、金融機関の中には、相続人になる親族の「何故、認知症と診断された親の預貯金を凍結せず、自由に払戻しさせたのですか」という言葉を恐れているところもあります。

 親の財産を使わせずに、少しでも多くの遺産を確保しようとする貪欲な相続人の特異な言動が「資産の凍結」を生み出すこともあるのです。

 そこで、税理士をはじめ専門職の人は、高齢者の財産管理や資産承継の相談を受けるにあたり、「認知症」や認知症に似た「高次脳機能障害」、そして「成年後見制度」の理解なくして相談者への正しい説明はできない時代を迎えていると言えます。

 今回は、認知症について説明します。

認知症とは
 
認知症は、一つの固有の病気のように思われがちですが、実は、記憶と判断力の障害を基本とする病気症状の集まり(症候群)なのです。「アルツハイマー型認知症」とか「レビー小体型認知症」という病名をよく聞くと思いますが、認知症の原因となる病気はおおよそ70種類にも及ぶとも言われています。

 そもそも、認知症は、「いったん正常に発達した脳の疾患で、記憶や判断力などの障害がおこり、普通の社会生活が送れなくなった状態」ですが、「その人が持っている高次の精神的機能が喪失し、それまで育んでいた社会において必要な認知能力が失われ、普通の社会生活が送れなくなること」を言うとされています。しかも、その人が、培ってきた知識や技能、体験の記憶喚起、情報の分析・集約、物事の道筋や道理を理解判断する能力、それから生きがいを発揮する力を失ってしまうという、何とも残念な病気なのです。

認知症イコール無能力とはない
 
認知症は、これにり患すると、その進行によって最終的には本人の判断能力(意思能力)が失われることにもなるのですが、多くの人が思っているように、「認知症者は無能力」とはなりません。


 認知症の全体の60パーセントを占めるという「アルツハイマー型認知症」のことは、ご存知だと思います。この病気は、記憶障害をはじめとする認知機能障害により日常生活や社会生活に支障をきたす病気ですが、最初は極めて緩徐に進行します。

 ですから、発病当初は、誰も病気に気づかないのです。

 その病気の進行によって、記憶障害、見当識障害、注意障害や問題解決能力の障害など現れて、重症度が増し、「直前したことをすぐ忘れる」「いつもやっていることがスムーズにできなくなる」ということが現れて、認知症を疑いこれに気づくのです。

 そして、「物盗られ妄想」や「徘徊」に発展します。こうして、高度になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり、最終的には寝たきりになるといわれています。

 認知症とは、その多くが、このように判断能力が次第に低下する病気なのです。そして、最後まで本人だけでなく、その家族をも苦しめる忌まわしい病気です。しかし、逃げることはできません。

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