相続税調査のターゲットを選定!? 『無申告理由のお尋ね』発送状況
2023/02/24
国税当局では、無申告事案について申告納税制度の根幹を揺るがすものと認識し、重点事案として積極的に取り組むことにしている。
特に、相続税の場合、一生涯に何度も経験するものでもなく、「うちは大した財産もないし、これくらい大丈夫だろう」などと申告しないケースもあるようだが、相続税の申告書が出されなかった場合、国税局や税務署などから行政指導の一環として「無申告理由のお尋ね」文書が送られてくることがある。
相続税における過去5年間の「無申告理由のお尋ね」文書の発送・回答などの実施状況は表のとおりだ(国税庁・申告審理時の行政指導(無申告理由のお尋ね・書類提出依頼)に係る報告書)。
「無申告理由のお尋ね」文書の発送は、当局が申告案内をした相続事案などのうち、当初申告等がなかった事案で、課税見込みとなる事案を中心に選定している。自主的な期限後申告を促す狙いがあるが、課税見込みの事案の中身、回答の有無次第でも、当局のその後の対応を振り分ける役目も担っている。実地調査に踏み込むかどうかが、納税者の対応次第で決まってくる部分もあるというわけだ。
なお、当初無申告でも災害などやむを得ない事情で申告期限の延長が認められており、延長期間内に申告をすることで「期限内申告」となる場合もあるので、この点は踏まえておきたい。
現在、当局では第一に1件当たりの追徴税額の大きい事案、第二に重加算税の賦課割合の高い事案を実地調査の対象として積極的に選定し、実績を上げている。東京国税局によると、令和3事務年度における相続税の無申告事案の1件当たりの追徴税額は約2,083万円(前年対比127.8%)。事前検討会などによる多角的な検討を行い、高額な追徴税額が見込まれる事案からの着手を徹底したことで、同事務年度は追徴税額が1億円を超える事案が5件(前年1件)あり、1件当たりの追徴税額が大きく増加した。無申告事案の1件当たりの追徴税額は約2,083万円で、申告のあった事案の1件当たりの追徴税額の約926万円より大きく上回ることから、引き続き、調査優先度を的確に判定し、積極的に調査を実施する(特官・資産課税部門統括官会議資料)としている。
無申告事案の実地調査は「未回答事案」から選定されるが、このように「期限後申告事案」であっても当局は追徴税額の大きい事案などを優先的に選定し、実地調査を展開している模様だ。