改正法が施行 成年被後見人宛の郵便物の転送が可能に
2016/10/19
平成28年10月13日、「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が施行された。
改正のポイントは次の2点。①成年後見人が家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けられるようになった、②成年後見人が成年被後見人の死亡後にも行うことができる事務(死後事務)の内容や手続きが明確化された。
郵便転送では、成年後見人の後見事務において必要がある場合に、家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛ての郵便物などを成年後見人の住所または事務所所在地に転送してもらうことが可能となった。物品の送付に利用される「ゆうパック」などは「郵便物」に該当しないので転送の対象には含まれない。
郵便転送により、例えば株式の配当通知、外貨預金の入出金明細、クレジットカードの利用明細といった成年被後見人の財産などに関する郵便物を受け取ることができるため、成年後見人は成年被後見人の財産状況を正確に把握し,適切な財産管理を行うことができるようになる。ただし、転送期間は6か月を超えることができないとされている。また、転送された郵便物のうち、後見事務に関係がないものは、成年後見人は速やかに成年被後見人に交付(郵送を含む)しなければならない。
一方、今回の改正によって成年後見人が行うことができる死後事務は、①個々の相続財産の保存に必要な行為、②弁済期が到来した債務の弁済、③その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為の3種類。
具体例として、①は相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断、相続財産に属する建物に雨漏りがある場合にこれを修繕する行為。②は成年被後見人の医療費、入院費および公共料金等の支払、③は遺体の火葬に関する契約の締結、成年後見人が管理していた成年被後見人所有に係る動産の寄託契約の締結(トランクルームの利用契約など)、成年被後見人の居室に関する電気・ガス・水道等供給契約の解約、債務を弁済するための預貯金(成年被後見人名義口座)の払戻しなど。
成年後見人が上記①~③の死後事務を行うためには、(1)成年後見人が当該事務を行う必要があること、(2)成年被後見人の相続人が相続財産を管理することができる状態に至っていないこと、(3)成年後見人が当該事務を行うことにつき、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかな場合でないこと、という各要件を満たしている必要がある。③の死後事務を行う場合には、(4)家庭裁判所の許可も必要となる。
なお、葬儀には様々な形態があり、その施行方法や費用負担をめぐって成年後見人と相続人の間でトラブルが生じる恐れがあるため、成年後見人が後見事務の一環として成年被後見人の葬儀を執り行うことはできないとしている。ただし、成年後見人が、後見事務とは別に個人として参加者を募り、参加者から徴収した会費を使って無宗教のお別れ会を開くことはできるようだ。
今回の改正法の規定は、成年後見のみを対象としており、保佐、補助、任意後見および未成年後見には適用されないので注意したい。
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