税理士が相談を受けた中小M&Aの事例①
2020/08/05
経済産業省が策定した中小M&Aガイドラインでは、中小企業にとってM&Aが身近なものであることを理解してもらうため、18パターンの豊富な中小M&Aの事例を紹介しているが、その中には税理士が関与先から相談を受けたことがキッカケで、M&Aが成立した事例も取り上げられている。その中のひとつを紹介する。
「譲り渡し側の条件の明確化が中小M&Aの成立に寄与した事例」
譲り渡し側:A社 譲り受け側:B社
業種:メッキ加工業 業種:溶接加工業
売上高:2億円 売上高:10億円
従業員:10名 業歴:45年
【意思決定に至るまでの経緯】
A社は、代表者である隅田紀子(仮)が80歳間近となる中、熟練の職人を抱えていたものの、親族・従業員に承継意思のある後継者が不在のため、中小M&Aを検討し始め、顧問税理士に相談した。
【成立に至った経緯】
A社は顧問税理士に勧められM&Aプラットフォームを活用した。複数件の譲り受け側候補のうちの一社が、他地域で溶接加工会社を営むB社であった。B社は、A社の熟練の職人の技術力を評価し、自動車用金属部品の加工の点で自社事業との相乗効果(シナジー)があると考え、事業譲渡契約締結に至った。A社および隅田は従業員の雇用継続を第一条件として伝え、譲渡額は譲歩した。
【成立に至った後の経緯】
B社はA社および隅田との約束通り、A社従業員の雇用をすべて引き継いだ。それと並行してB社は全従業員へのヒアリングを行い、中小M&Aを機に人事制度改革・ 働き方改革等を進め、待遇の改善が実現した。譲り渡し側の条件の明確化が中小M&Aの成立に寄与した。