「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」のパブコメ結果を公表
2016/10/25
法務省はこのほど、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見募集の結果をまとめて公表した。
まず、総論的事項については、寄せられた意見は少数だったが、近年の晩婚化・少子化、超高齢化社会の到来などによる社会情勢の変化に鑑み、配偶者の生活への配慮等の観点から相続法制の見直しをすることに賛成するとの意見が寄せられた一方で、配偶者の保護等に偏ることなく、多様な家族の在り方を踏まえた見直しが望まれるとの意見も寄せられた。
また、相続法制の見直しが国民生活に大きな影響を及ぼすことからすれば、十分に審議に時間をかけ、国民に丁寧に説明をしながら多くの国民の理解を得られたものについてだけ、改正すべきであるとの意見も寄せられた。
配偶者の居住権を保護するための方策として、短期居住権の新設については、配偶者の居住の安定に資するとして賛成する意見が大勢を占めた。また、長期居住権の新設については、配偶者の居住権保護の観点から賛成する意見と、財産評価の困難性等を理由に反対する意見で分かれた。
遺産分割に関する見直しでは、配偶者の相続分を見直すことについて、「配偶者の相続分を現行制度以上に引き上げなければならないとする立法事実が明らかでない」、「被相続人の財産形成に貢献し得るのは配偶者だけではなく、それ以外の相続人や、さらには内縁関係にある者にも貢献が認められることがあり得るのであって、配偶者の相続分のみを一律に増加させることは相当でない」、「夫婦の関係や配偶者の貢献の程度は様々であって、そのような差異を過不足なく反映する制度を設計することは困難であり、配偶者の貢献を相続において考慮するためには、一律に配偶者の相続分を引き上げるのではなく、遺言や寄与分制度など、他の方法による方が妥当である」などとして、配偶者の相続分の引上げという見直しの方向性自体に反対する意見が多数を占めた。
他方、婚姻期間が長期間に及んでいる場合には、生存配偶者が高齢になっていることが多く、他の相続人と比較して生活保障の必要性が高いなどとして、相続分を引き上げることに賛成する意見も複数寄せられた。その他、一定期間が経過した場合に配偶者の法定相続分を増加させるのであれば、婚姻期間が短期間である配偶者の法定相続分は現行法よりも引き下げるべきであるという意見が複数寄せられた。なお、可分債権を遺産分割の対象に含めることについては、賛成意見が大勢を占めたが、遺産分割時までの権利行使を認めるか否かについては、原則としてこれを認める案と、原則としてこれを禁止する案で意見が分かれた。
そのほか、遺言制度に関する見直しでは、自筆証書遺言の方式緩和について、財産の特定に関する事項を自書でなくともよいこととすることについては、賛成意見が多数を占めた。自筆証書遺言を公的機関で保管する制度の創設については、賛成意見が多数を占めたが、反対意見や更なる検討を求める意見もあった。
遺留分制度に関する見直しでは、減殺請求権の行使によって生ずる権利を原則金銭債権とする点については、賛成意見が多数を占めた。受遺者または受贈者の意思表示により、金銭債務の支払に代えて、遺贈または贈与の目的物の返還を認める制度については、裁判所の裁量により目的物の内容を定めることとする案に賛成する意見が多数を占めた。
相続人以外の者の貢献を考慮するための方策を設けることについては、被相続人の療養看護等に努めた者等の保護を図る必要があるなどとしてその方向性に賛成する意見と、現行法上も一定の範囲では不当利得返還請求権等の成立が認められる場合があり、他方、このような方策を講ずると相続に関する紛争が複雑化、長期化するおそれがあるなどとして、反対する意見に分かれており、賛否が拮抗している状況にあった。
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