国際戦略トータルプランに基づく具体的な取組状況
2018/01/16
国税庁では、国際課税への取組みを重要解題として位置付け、富裕層や海外取引のある企業による「海外への資産隠し」、「国外で設立した法人を利用した国際的租税回避」、「各国の税制・租税条約の違いを利用した国際的租税回避」などに対して積極的に調査等を実施している。
平成28年10月には、国際課税の取組の現状と今後の方向を取りまとめた「国際戦略トータルプラン」を公表したが、このほど、同トータルプランに基づく具体的な取組状況が公表された。主な事例を紹介する。
<国外送金等調書(送金)の活用事例>
金融機関から税務署に提出される国外送金等調書(送金)より、調査法人が、X国の個人A名義の銀行口座へ多額の送金をしている事実を把握したことから、取引の実態を確認するため調査を実施した。調査の結果、調査法人は、知人であるY国のAと通謀し、Aが主宰するB社の請求書を偽造する手口で架空の業務委託費を計上し、捻出した簿外資金を、X国にあるA名義の銀行口座に送金していたことが判明した。
<国外財産調書・財産債務調書の活用事例>
日本の居住者である調査対象者が税務署に提出している国外財産調書の記載内容から、調査対象者がX国に不動産と銀行口座を保有している事実を把握したものの、国外不動産については不動産所得の申告が、国外預金については利子所得の申告が無かったため調査を実施した。調査の結果、不動産登記情報等から調査対象者はX国に保有する不動産を貸付の用に供しており、不動産所得の申告が必要であることが判明した。また、X国に保有する国外預金から利子が発生しており、利子所得の申告が必要であることが判明した。
<外国当局からの自動的情報交換資料の活用事例>
X国からの自動的情報交換資料により、調査対象者が保有する海外の預金に係る利子が生じている事実を把握したため、詳細を解明すべく調査に着手した。調査の結果、調査対象者は、X国の銀行に多額の預金を保有し、その預金から生じた利子が申告漏れとなっていたことが判明した。また、調査の過程で、海外に所有していた不動産を売却している事実を把握したため、不動産売却に関する書類を確認したところ、不動産の譲渡益が発生し、申告漏れとなっていたことが判明した。
なお、調査対象者は、3億円以上の国内財産、5千万円超の国外財産を保有しているにも関わらず、財産債務調書及び国外財産調書を提出していなかったため、各調書の提出を求め、提出を受けるとともに、国外財産に係る申告漏れに対して加算税を5%加重し賦課した。
<徴収共助事例>
X国籍である滞納者は、申告した国税を納付せずにX国へ帰国した。滞納者は国内財産を有しておらず、納税管理人を通じて、租税条約に基づく徴収共助の要請の可能性を説明したところ、一部の国税が自主的に納付されたものの、残額は納付されなかった。そこで、X国の税務当局に対し、徴収共助を要請したところ、X国の税務当局によって、滞納者から残額の国税が徴収されるに至った。その後、X国の税務当局から送金を受け国税に充当した。