日商 円滑な事業承継と新たな挑戦を後押しする税制を要望
2017/09/29
中小企業の事業承継問題がクローズアップされているが、日本商工会議所では、平成30年度税制改正に関する意見のなかで、「5~10年後には大事業承継時代が到来する」と予測している。しかし、それと同時に「新たなビジネスチャンスを生み出す意欲ある経営者の活躍を促すまたとないチャンスでもある」として、中小企業の価値ある事業を次世代へ引き継ぎ、時代のニーズに合った新たな事業への挑戦を後押しする税制の実現を要望している。
特に、現行の事業承継税制は、制度改善によって適用件数は直近では増えているが、年間 500 件程度に止まっており、間もなく世代交代期を迎える中小企業者が30 万者超存在すると言われる状況を踏まえれば、その数は極めて少ないと指摘。また、国際的に見ても、日本の事業承継税制は厳しい要件を課していることから、諸外国並みの事業承継税制へと抜本的に見直すことを求めている。
その内容を見てみると、まず、現行の事業承継税制は、先代の配偶者が多数の株式を持っている場合、被相続人と後継者の関係に当たらないため税制措置の対象にならない点。後継者を1人に選定しなければ制度を利用することができないなど、適用対象が極めて限定されている点などを改善するため、成長に必要な経営人材の登用を制限する代表者要件・筆頭株主要件等の見直しを求めた。
次に、事業環境の変化への対応を制限する事業継続要件の見直しとして、納税猶予開始後5年経過時点で納税を免除するとともに、事業承継期間において雇用維持要件を満たせなかった場合や猶予対象株式を一部譲渡した場合には、その割合に応じた納税猶予額分を納付する等の措置を要望。そのほか、早期かつ計画亭な事業承継を促進する措置の創設、事業承継税制の活用に向けた改善、取引相場のない株式の評価方法の見直し、分散した株式集中化の促進などを求めた。
また、中小企業の間でもM&Aが活発化しつつあるが、中小企業にとっては依然として縁遠い存在で、自社がM&Aの対象として評価されるかどうか分からず、経営者の中に会社の売却という手段自体が初めから選択肢にない場合が多いと指摘。一方、買い手側にとっても、買収に伴うリスクの見極めが難しく、M&Aに踏み切れないことも少なくないことから、売り手、買い手それぞれにM&Aへのインセンティブとして、株式譲渡益に係る特別控除の特例の創設等、中小企業の価値ある事業の継続を後押しすることを要望した。