2020年大綱 国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例の創設
2020/01/09
2020年税制改正大綱では、個人所得課税において、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例の創設が盛り込まれている。
会計検査院の平成27年度決算検査報告では「国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがあり、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上することにより、不動産所得の金額が減少して損失が生ずることになり、損益通算を行って所得税額が減少することになる」との指摘があった。
実際、所得税額の申告納税額が多額となっている麹町税務署など10税務署から証拠書類として提出された平成23年分から25年分までの確定申告書等を検査したところ、国外に建物を所有していた延べ751人が減価償却費を計上していた建物延べ1585件のうち、耐用年数が10年以下の建物で中古と判断される建物、また、耐用年数が10年を超えて中古である旨の記載があった建物は延べ562件。このうち、国外の中古等建物は延べ511件で、減価償却費の合計は39億8650万円、所有者数は延べ337人だった。
そして、国内に所在する中古等建物は、耐用年数が11年以上となっているものが過半を占めていたのに対し、国外に所在する中古等建物は耐用年数が4年、7年または9年となっているものが多く、とりわけ「4年」となっているものの割合が、国外に所在する中古等建物全体の約半数を占めていた。
会計検査院の指摘に基づき、令和3年分から、不動産所得の金額の計算上生じた損失のうち、耐用年数を簡便法により計算した国外にある中古建物の「減価償却費に相当する部分の損失」については、生じなかったものとみなし、損益通算等ができないことになる。