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保険・不動産Vital Point of Tax

低未利用土地等譲渡の100万円特別控除 開始半年で2501件に適用

2022/07/26

 令和2年度税制改正により創設され、同年7月に適用がスタートした低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除(租税特別措置法35条の3、以下:100万円控除特例)。その制度創設の初年(令和2年)の適用状況が、国税庁の内部資料で分かった。

 それによると、令和2年7月から同年12月までの適用件数は2501件だった。各国税局の適用件数は次の表のとおり(申告者住所地ベース)。



 100万円控除特例は、個人が所定の低未利用土地等を譲渡し、譲渡後の当該低未利用土地等の利用について、市区町村長の確認がされたものの譲渡であって、その対価の額の合計が500万円以内である場合、譲渡所得の計算上100万円を控除する制度。

 譲渡対価500万円以内の判定は、土地が共有であれば所有者ごとに判定する(措置法通達35の3-2)。たとえば、兄弟2人が持分2分の1ずつ共有の土地を900万円で譲渡した場合、兄弟でそれぞれ500万円の適用枠があるため、一人当たりの譲渡所得は450万円となり、100万円控除特例の要件をクリアすることになる。

 100万円控除特例を適用する際に必要となる土地の所在地の市区町村が発行する確認書の交付実績(国土交通省令和3年7月公表)を見ると、令和2年7月から同年12月までの全国の確認書交付実績は2060件。この中の約2割は共有だったとされており、国税庁のデータは国土交通省のデータをほぼ裏付ける。

都道府県1団体当たりの確認書交付実績の平均は約44件で、東京国税局管内の東京、神奈川、千葉、山梨の確認書交付実績を見ると、その数は約100件に過ぎない。東京国税局管内における1 0 0万円控除特例の適用件数501件のほうがはるかに上回っており、譲渡したのは申告者の地元の物件ではなく、ほかの道府県の土地を譲渡している状況がうかがえる。

 なお、低未利用土地等とは、居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、またはその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途もしくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地や、その低未利用土地の上に存する権利のことをいう。

 国土交通省が確認書を交付するにあたって出した文書「低未利用土地等の譲渡に係る所得税及び個人住民税の特例措置の適用に当たっての要件の確認について」によると、「低未利用土地とは、具体的には、空き地(一定の設備投資を行わずに利用がされている土地を含む。)及び空き家・空き店舗等の存する土地とする。ただし、コインパーキングについては、一定の設備投資を行い、業務の用に供しているものではあるが、譲渡後に建物等を建ててより高度な利用をする意向が確認された場合は、従前の土地の利用の程度がその周辺の地域における同一の用途又はこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っており低未利用土地に該当すると考えて差し支えない」とされている。低未利用土地等に該当するかどうかは、これで判断するのがよさそうだ。

 ただし、親族等所定の特別関係者への譲渡ではないこと、譲渡の前3年間に譲渡した土地を分筆して100万円控除特例の適用を受けているなど所定の譲渡所得課税の特例を受けていないことが適用の要件となっている。適用期限は2022年12月31日まで。「空地・空き家」の増加を抑制する制度創設の趣旨からすると、制度の適用期限延長も考えられるが、いずれにしても利用していない不動産に係る固定資産税等の固定費を削減し、保有財産のリストラをするにはチャンスといえるので、該当する場合は特例が使えるうちに検討したい。

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