小規模宅地等の特例適用めぐるトラブル②
2022/06/13
1階と2階が分かれた建物 ~令和3年6月21日裁決~
被相続人は平成13年1月、2階建ての一棟の建物を新築し、区分所有建物である旨の登記をした。建物はそれぞれ玄関、リビング、寝室、台所、洗面所、風呂場、トイレがあり、建物の内部では1階と2階で行き来することができず、外階段によって行き来する構造だった。
なお、建物の電気、ガス、水道のメーターは建物1階部分と建物2階部分とでそれぞれ分かれており、被相続人が死亡するまでの間、建物1階部分については請求人である子が契約して使用料を支払っており、建物2階部分については被相続人が契約して使用料を支払っていた。相続開始後、母親と子は、それぞれ居住する敷地権について小規模宅地等の特例を適用して申告したところ、税務署は子の相続した敷地権部分について特例適用を否認した。
争点は、①子の住む建物の敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するか。①子は、被相続人と生計を一にしていた親族に該当するか否か。
審判所は「事実を総合勘案して、社会通念に照らして客観的に判断すると、被相続人夫婦は、1階部分に生活の拠点を置いていたと認めることはできず、敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するとは認められない」と判断。また問題の建物は「一棟の建物と認められるものの、『区分所有建物』に該当することから、問題の敷地権は、被相続人の居住の用に供されていた部分に含めることはできない」とした。
②について審判所は、事実として、被相続人の妻の生活費は、被相続人の年金収入等で賄われていることを指摘し、「居住費、食費、光熱費 その他日常の生活に係る費用の主要な部分について独立した資によっていたものと認められるから、請求人ら(子)と日常生活の資を共通にしていた関係にあったと認めることはできない」と判断している。
このように、小規模宅地等の特例を適用するにあたり、相続人が相続直前まで被相続人と同居していたか、同居していなくとも「生計一」であったかどうかが問われるケースが目立つ。