小規模宅地等の特例適用めぐるトラブル③
2022/06/16
特例適用の判断ミスで税理士に損害賠償請求
審判所に対する審査請求とは別に、納税者が、申告依頼をした税理士に対し、小規模宅地等の特例を適用することができたのに、それを怠ったなどとして、損害賠償請求訴訟を裁判所に提起する事例も出てきている。
たとえば、相続人の会社が、被相続人の土地を無償で借りていたところ、相続直前になって、その土地を賃貸借契約に切り替えたが、初回の賃料支払い前に相続が発生。申告の依頼を受けた税理士が、この土地について小規模宅地等の特例の適用をしなかったため損害を被ったとして裁判になった事例がある(横浜地裁令和2年6月11日判決)。
税務上の争点は、相続人の借りていた土地が小規模宅地等の特例の適用のある「特定同族会社事業用宅地等」に該当するかどうか(判例時報2483号)。横浜地裁は、相続の開始前に賃料の支払われたことがあることを必須とするものではないなどとして、最終的に小規模宅地等の特例の適用ができたと判断している。
また、最近の争いとしては、相続税の申告依頼を受けた税理士法人が、被相続人が住んでいた自宅の敷地について小規模宅地等の特例を適用せず、別の土地を貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用したことで、数百万円もの相続税を払い過ぎたとして相続人が裁判を起こした事案がある。小規模宅地等の特例は、特例を適用する宅地等を一度適法に選択すると、より有利な選択があったことが判明しても更正の請求で変更を認めてはもらえない。そのため、納税者が裁判で損害賠償を求めるわけだ。
この争いで税理士法人側は、被相続人が相続直前に自宅に居住せず、その理由が老人ホームなどの政令で定める施設以外で介護等を受けていたため、特例の要件を満たさないと反論している模様だ。