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インタビューInterview

人生100年時代の課題に応える 日税連『公益業務支援部』が始動

2025/11/06

相間 宏章 専務理事(右) 山口 伸二 常務理事 公益業務支援部長(左)

 日本税理士会連合会では、これまで公益活動の一環として成年後見制度への参画を促進してきましたが、人生100 年時代を見据え、相続・遺言・信託などの業務支援へと領域を広げるべく、このたび「公益業務支援部」を新設しました。今回は同部を担当する相間宏章専務理事と、山口伸二常務理事・公益業務支援部長に、その設立の背景や今後の活動方針についてお話を伺いました。

――新たに「公益業務支援部」が創設された背景を教えてください。

相間:これまで日税連では、成年後見制度を公益活動の一つとして位置付け、日税連成年後見支援センターを特別委員会として設置し、税理士による制度への参画を促進してきました。しかし、成年後見人の担い手の8割以上を親族以外の第三者後見人が占めており、特に専門職が選任される場合は事案に応じた専門性が判断基準になるものと推察されるところ、税理士の割合は令和5年度実績でわずか0.2%にすぎませんでした。他方、国においても成年後見制度の利用促進や運用改善、見直しが進められており、こうした状況を踏まえた結果、大胆な方針転換が必要であるとの結論に至りました。

山口:少子高齢社会を迎えたわが国では、人生100年時代を見据え、信託・後見・遺言など相続・贈与関連業務の重要性が一層高まっています。これらは税理士業務に直結する面もある一方で、関連する制度の理解や他の専門職との連携も欠かせません。また、令和4年の税理士法改正により、税理士法人の業務に成年後見事務が追加されるなど、税理士にとって成年後見制度への関わり方は、公益活動からさらに一歩進んだ形となりました。そこで日税連および税理士会で検討を重ねた結果、公益活動対策部と日税連成年後見支援センターを統合し、新たに公益業務支援部を創設しました。

――具体的にどのような活動を行っていくのでしょうか。

山口:令和7年度事業計画の重点施策では、「遺言や民事信託を活用した財産承継を主とする相続対策事業が広がりを見せる中、税理士は、相続税申告のみならず、そこに至るまでのあらゆるライフイベントにおいて依頼者を的確に支援していく必要がある。人生100年時代を見据えた付加価値の高い税理士の業務の実現に向け、税理士会会員を支援する施策を検討する。」とした上で、「人生100年時代を見据えた付加価値の高い税理士の業務の実現及び税理士の公益活動の推進に向けて、税理士会会員への支援策について検討を進める。」という項目を掲げています。これを受けて、公益業務支援部の事業計画について(表)のように定めています。

相間:これまで旧公益活動対策部が所掌していた、いわゆる「公益活動」という定義で括られる、地方公共団体の外部監査や監査委員への対応、政治資金監査制度への対応等は引き続き重要であり、新部の柱になりますが、新たな柱として、相続対策事業に係る会員支援が加わるというイメージです。そして、旧日税連成年後見支援センターで所掌していた成年後見制度については、従来の法定後見に主軸を置いた発想から、任意後見に軸足を移すことになると考えています。成年後見助成金や賠償責任保険制度の運営は維持しつつ、新しく加わる視点を踏まえた会員支援策や国民への広報活動等についても検討していきたいと考えています。

――会員への情報提供や理解を深めるための施策について教えてください。

相間:まだ部の活動が始まったばかりですので、これからの検討になりますが、信託という分野になじみの薄い会員は多いと思われますので、まずはそうした制度等の基礎知識を広めることが重要だと考えています。研修はもちろん、分かりやすいツールの作成も検討したいと思います。また、他士業の業務範囲を侵害しないよう留意する必要がありますので、こうした点に関するガイドラインのようなものの作成も検討する必要があるかもしれません。

――他の専門職などとの連携もお考えでしょうか。

山口:他士業との連携は重要です。各士業の全国組織との意見交換なども実施できたらと考えています。無料相談会についても、他士業と合同で開催することで、より市民の皆様のニーズに応えることができると思いますし、この事業の規模が大きくなれば、それだけ税理士や税理士会のPRにもつながると考えています。

――最後に、今後の抱負をお聞かせください。

相間:公益業務支援部では、これまで十分に手が付けられてこなかった、いわば未開拓だった分野に積極的に取り組んでいきたいと考えています。例えば、任意後見制度と税法との関わりはまだ整理されていない点が多く、相続税における後見費用の取扱いもほとんど議論されていません。こうした課題の中には、将来的に法整備が必要となる部分もあるかもしれませんので、調査研究部などとも連携しながら検討を進めていきたいと思います。

山口:公益活動は、税理士の使命及び職責に鑑み、税理士が日常業務により培われた能力を他の制度に活用することで、その制度の安定的・継続的発展に寄与し、日本社会の発展につなげるためのものです。国民の皆様が安心して暮らせるように、税理士だからこそ果たせる公益活動をこれからも推進していきたいと思います。また、新たに取り組むことになる相続対策事業について、相間専務理事が申し上げたように、これまで未開拓だった領域には課題も多くありますが、国民に信頼される税理士像をさらに発展させ、よりよい「人生100年時代」を実現させるべく、公益業務支援部の仲間と力を合わせ、一歩ずつ着実に取り組んでまいります。

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