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インタビューInterview

会員が作ったロボットを共有し税理士業務の自動化を加速!

2019/12/04

大城 真哉 税理士
会計事務所RPA研究会株式会社 代表取締役

 
――税理士業界でもRPAに注目する人が増えてきました。

 2つの外的要因により、会計事務所を取り巻く環境が大きく変わってきたことが影響していると考えます。1つは少子高齢化にともなう人手不足です。会計事務所でも人の採用が非常に難しくなっています。もう1つは働き方改革による残業の見直しです。これまで職員に残業させることで人手不足をカバーしてきた事務所もあると思いますが、これからは人が採れないのに残業もさせにくいという状況になります。そこで、これら2つの外的要因を克服するため、人の代わりにロボットに作業をさせる事務所が出てきました。いわゆる「RPA」の活用です。私の事務所でも作業の自動化を目指し、4年前にRPAツールを導入しました。

――実際に導入してみていかがでしたか。
 高度なプログラミングの知識がなくてもロボットが作成できると聞いていたので、事務所の職員たちとロボットをたくさん作ろうと話していました。ところが、導入したRPAツールは難度が高く、専門的なITスキルがないと対応できないものでした。職員の一人が何とか操作することができましたが、結局、ロボットはほとんど作れず、途中で挫折しました。

――RPAは簡単と聞きますが、やはり難しいのでしょうか。
 簡単といってもレベルが分かれますので、それぞれの事務所に見合ったRPAツールを選ぶことが重要といえます。私たちはツール選びを誤りましたが、それでもRPAに関する理解は一層深まり、事務所の作業を自動化させることができれば年間で数千時間は短縮できると確信しました。そこで、知り合いのIT企業に市場に出回っている様々なRPAツールを見てもらい、ITスキルがなくても誰でも簡単にロボットが作れるRPAツールを制作してほしいと話を持ちかけました。そして、昨年にベータ版が完成し、今年1月に正式版が出来上がりました。

――大城先生が求めていたRPAツールが誕生したわけですね。
 これ以上ないというほど簡単なものが出来上がりました。そして、このツールを全国の会計事務所、とりわけ小規模事務所に使ってもらえれば、人手不足の問題解決の一助になると思い、「会計事務所RPA研究会㈱」を設立して会計事務所向けにリリースしました。すると、全国から問い合わせが相次ぎ、すでに140事務所(令和元年9月末現在)が研究会に入会してRPAツールを利用されています。毎月20事務所くらいの申込みがありますので、年内には200事務所近くまで増えると思います。また、会計事務所のRPA導入成功事例セミナーやRPAツールの体験セミナーを開催していますが、年内はすべて満員という状況です。今年9月には、福岡、大阪、名古屋、東京の4会場において各50名、合計200名のRPAセミナーを開催しましたが、こちらも大好評でした。北海道でも行ってほしいとの要望を受け、今年12月に札幌で追加セミナーを行います。来年以降も引続き全国の会場において、皆様の要望にお応えするセミナーを開催していこうと考えています。

RPA導入を成功させるために会計事務所がクリアすべき課題とは!?

――なぜ、研究会という形にしたのでしょうか。
 会計事務所でRPAの導入を成功させるためには、自前でロボットを作れるほかに、もう1つ大事な問題をクリアする必要があります。それは、会計事務所には自動化できる作業がたくさんありますが、一事務所だけでロボットを作成するには時間的に限界があるということです。担当者がロボットを1カ月に1台作っても年間12台です。2~3月に1台となれば、年間でわずか数台です。これでは多少の作業短縮は実感できるかもしれませんが、年間で数千時間もの作業時間を短縮させることは到底できず、RPAの真の価値を享受することはできません。そのうち、時間と労力の割には効果が少ないという不満が出てきて、ロボットを作るペースも落ちていき、最終的にRPAを断念してしまうわけです。

――ロボットの数をどれだけ保有できるかが重要というわけですね。
 そうです。だからこそ、私たちはRPAツールを売って終わりではなく、RPA研究会の会員になってもらい、毎月1台のロボットを提供していただくようにお願いしています。もちろん、すべての事務所に毎月提供してもらうのは難しいと思いますが、それでも200事務所のうち2割の事務所に提供してもらえれば毎月40個、1年間で480個のロボットが集まります。さらに、そのうち2割のロボットが、すべての事務所に共通する有益なものであれば、年間100個の優れたロボットを手に入れることができます。そして、研究会の会員が増えれば増えるほど、入手できるロボットの数はさらに増えていきます。これこそが研究会を発足させた一番の目的です。

――研究会のRPAツールを導入する場合、操作方法などはしっかり教えてくれますか。
 はい。まずは私どものサポートを受けながら2~3時間かけて基本操作を習得してもらいます。次に、基本操作をすべて用いて練習用のロボットを作成する初級勉強会を行います。その後、それぞれの事務所で必要なロボットを考えてもらい、私たちと一緒に作成していきます。このように3つのステップでロボット作りを習得していきますが、どこかで分からないところが出てきたら同じ過程を何度行っても構いません。ロボットが作れるようになるまで徹底してサポートします。

――今後の展望をお聞かせください。
 短期的には、会員の皆様と共に今年より来年、今月より来月を合言葉により良いロボットの作成を心掛け、毎月集まったロボットの使い道や人気のあったロボットなどを皆様にお伝えしていきたいと考えています。短期から中期にかけては、研究会の大きな目標である関与先の中小企業へのアプローチを行っていきたいと考えています。少子高齢化や働き方改革への対応は、会計事務所の関与先である中小企業にとっても大きな問題です。そこで研究会では、会員の事務所が関与先にRPAを提案し、ロボット作りを手伝い、作業を自動化させることで問題解決に繋げていくコンサルティングを提供できるように支援していきます。現在、中小企業に役立つ汎用性の高いロボットを作成するための準備を進めているところです。こうした中、私が危惧しているのは、RPAを上手く利用できず、「会計事務所にRPAは使えない」といった否定的な意見が業界内に蔓延することです。研究会のツールのほかにも簡単なものがたくさん提供されていますので、それぞれの事務所のレベルに見合ったRPAツールを選んでいただき、多くの方々にRPAの価値を実感してもらいたいと思います。

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