日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

インタビューInterview

RPAツールの導入で重視したのは現場の職員が簡単に使えるかどうか

2020/03/25

社員税理士 廣瀬 翼 税理士
税理士法人広瀬(京都・京都市)

――事務所にRPAを導入するまでの経緯をお聞かせください。
 私は東京のコンサルティング会社に勤めていましたが、5年ほど前に創業1930年の曾祖父の代から続く京都の会計事務所(20064月に税理士法人に組織変更)に戻ってきました。その時にまず思ったのが、所内で紙や手書きでの作業が多いということでした。私は学生の頃からパソコンを触るのが好きで、ITはまさに得意分野だったので、新しいITツールの導入や業務フローの見直しなどを行いながら事務所のペーパーレス化や業務効率化を少しずつ進めてきました。その頃からRPAには注目しておりましたが、当時はあまりにも高額だったため導入をあきらめていました。その後、安価なRPAが販売されるようになり、展示会などを訪れて最適なツールを探していたところ、知り合いの先生の紹介で会計事務所RPA研究会㈱の代表を務めている大城真哉税理士にお会いすることになりました。

――大城先生には前号の日税ジャーナルの「RPAインタビュー」に出演していただきました。
 私も読ませていただきました。そのインタビューにも書いてありましたが、RPA研究会が提供しているRPAツールの最大の特徴は、ITスキルがなくても誰でも簡単に操作できる点です。また、全国の研究会の会員事務所がそれぞれロボットを作成し、それらを皆で共有する仕組みのため、一事務所で作成するよりも多くのロボットを利用でき、導入時の負担も軽減されます。このツールと仕組みであれば使いこなせると思い、RPA研究会の「EzRobot(イージーロボット)」の導入を決めました。

――廣瀬先生のITスキルならば、もっと難しいツールでも使いこなせる感じがします。
 私一人で使用するのであれば、もう少し難しいツールを選んだかもしれません。しかし、会計事務所において自動化させたい業務を一番把握しているのは、現場の職員の方たちです。それを吸い上げるためには、現場の職員の方にRPAというものを理解し、使ってもらう必要があります。入口でつまずいたら誰も協力してくれませんので、ツールの使いやすさというのは一番重視しました。また、どのようなシステムでも複雑な機能というのは便利であったとしても使われない事がほとんどですので、機能が多岐にわたるRPAツールを選ぶ必要はないと考えていました。

――これまでに自動化させた業務はありますか。
 現在、事務所内にプロジェクトチームを作ってロボットの作成を進めています。例えば、立替経費申請からの自動記帳、申告のお知らせの自動取得、年末調整システムへの自動転記などがあります。また、関与先のグループ会社に複数の帳票を毎月PDFで送っていましたが、数社の様々な帳表を会計システムからPDFに変換するのに時間がかかっていましたので、ボタンひとつで自動で変換するロボットを作りました。ひとつひとつはどれも小さな単純作業ですが、こうした小さな成功体験を繰り返し、職員たちに効果を実感してもらうことが、RPAの導入を促進させるポイントといえます。

地元の企業や会計事務所にRPAセミナーを隔月で開催

――RPA研究会の協力税理士法人となっていますが、具体的にどのような活動をされていますか。
 地元の一般企業向けにRPA導入セミナーを2カ月に1回開催しています(セミナーの詳細は税理士法人広瀬のHPにてhttps://www.hiroseac.co.jp/)。これまで4回開催しましたが、毎回多くの方に参加していただき、中小企業でもRPAの関心が高まっていることを実感しています。このセミナーには、会計事務所の所長や職員も多く参加されていますので、同業者の方々には会計事務所向けの資料を使って別途説明も行っております。これまでセミナーを通じて、一般企業で2社、会計事務所で6事務所がRPA研究会の「EzRobot(イージーロボット)」を導入されました。

――導入後のフォローもしてくれるのでしょうか。
 RPAの導入から運用に関する質問や相談にお応えするほか、事務所にお邪魔して操作方法の説明や社内向けの勉強会などをすることもあります。私どもの導入実績やノウハウもすべて共有させていただくほか、毎月第3水曜日に事務所のプロジェクトチームのメンバーが集まってロボットの作成会を行っていますので、そこに外部の方々にも参加してもらって一緒にロボットを作っています。

――なぜ、そこまでRPAの普及に力を入れるのでしょうか。
 会計事務所への普及については、税理士業界の人不足や不人気が叫ばれる中で、税理士業界を盛り上げたいという想いが根底にあります。地元の会計事務所のRPAの導入をサポートして、そのうち全国の税理士から「京都の会計事務所はIT化が進んでいる」と言われるくらいになりたいですね。京都に限らずですが、少しでも興味がある方は是非セミナーに参加していただきたいと思います。また、一般企業にRPAを普及する理由としては、税理士は税務だけでなくお客様の経営のサポートをすることが大切な役割だと思っています。今後、RPAは間違いなく中小企業の経営に欠かせないものになってきますので、そうしたRPAやIT関連の情報をいち早く経営者に提供し、導入をサポートすることは、関与先への大切な付加価値サービスだと考えます。

働きやすい環境を整備して夢は業界初の完全週休3日

――これからRPAの導入を検討している人にアドバイスをお願いします。
 RPAは「魔法」ではありませんので、単にシステムを購入しただけでは効果が出ずに終わってしまいます。失敗しないためにも、しっかりと情報収集を行い、成功する仕組みを知った上で導入することをお勧めします。また、業務の効率化を大きく実感するのは、ロボットを作成して運用後の話です。それまでには一定の労力が必要になるので、導入作業を行う担当者の業務負担を軽減するといった配慮なども必要です。そのほか、社内研修などでこれからの時代におけるRPAの必要性を全社員が認識し、組織として業務の自動化や効率化に取り組んでいくという風土や協力体制を作ることが重要といえます。

――最後に今後の展望をお聞かせください。
 私どもは創業90年の歴史がありますが、先日、地元の同業者から「税理士法人広瀬は老舗だけど最先端だよな」と言われて非常にうれしく思いました。これからもRPAやAIなどのテクノロジーを最大限に活用し、ストレスのたまる単純作業はロボットに任せて、私たちは楽しくてやりがいのある仕事、例えば、経営者とのコミュケーションや高度な税務相談、経営相談、コンサルティング、人の教育などに時間を費やしていきたいと考えています。また、職員たちのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を推進させる環境も整えていきます。まだまだ残業もあり夢のような話かもしれませんが、現在のサービス価値を維持しながらも業界初の完全週休3日を実現させたいと思っています。

PAGE TOP